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SOLILOQUY

ひとりごと

 
August 06, 2010 20:05:03

世界

カテゴリー: 日記
私の初めての一人旅は、学生の時のヨーロッパ旅行だった。当時は簡単に長期の旅行なんてできない世相だったので、アルバイトでお金を貯めて就職する前に外国に行っておかなければ次にいつ行けるか分からない・・・という思いがあった。当時1ドル360円の固定相場制の時代で、今の若い人から見れば別の惑星の話に違いない。初めて乗った国際線エアラインの乗務員に英語で話しかければ首を傾げて片言の日本語でかえされ、出ばなで英語力に自信をなくした。ルーブル美術館の前でカメラマン風のフランス人(?)に1枚のポラロイド写真を撮影され50フラン(今ではユーロなのだが)という、ほうがいな代価の請求を拒否できず、払ってしまった自分が情けなくて悔しく思い、今でもそのときの情けなさが頭をよぎる。スペインに入国する前には、当時内乱が終息しておらず田舎に行くとライフルで狙撃されるかも知れないと脅され、それでも行ってみた。プラドー美術館では“裸のマヤ”の原画の前で、写真撮影させるから金をよこせと警備員に言われ・・・エッフェル塔の近くでは、偶然話しをしたヨーロッパに着いたばかりの同年代の日本人青年が、私の忠告を無視してジプシーの子供達に囲まれ相手をしたものだから財布を盗まれた。泊まった宿は英語が通じないし、当時まだアメリカの習慣であったチップを置いても手をつけてくれない。ドイツからオランダに向かう国際列車のなかの社内検閲(イミグレーション)で他の乗客の前で腹巻に隠していた有り金を全部みせろと言われ・・・どうしてそこまでしないといけないのかと思いつつ、渋々服を捲り上げた。
いっぱい恥ずかしい思いをした。なんて自分がちっぽけな日本人かと思った。

今日は、ふと若かりし当時の日々を思い出した。今となっては楽しい日々を思い出した。
恥をかき、悔しく情けない思いをし、英語が通じない外国があることを知り、盗人と詐欺師が堂々と闊歩する通りがあることを知り、世の中に戦争や内乱というものがあるということを知った。ほんの少し・・・少しだけ世界というものを知ったような気がした。
私は今、若かった頃の、あの当時と同じ経験をしようとは思わない。だから世界のことは今でも少ししか分からない。でも私は昔少しだけ世界を知った。

私の息子を含め、今の青年に言いたい。恥をかけ・・・知らないことは知らないと言え・・・悔しく思え・・・経験するなら今のうち・・・

あーっ・・・私は凄いおっさんになったものだ・・・
(これ、以前も書いたような気がしてきた。おっさんどころか老人やな・・・)