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SOLILOQUY

ひとりごと

 
June 10, 2011 20:08:19

美学

カテゴリー: 日記
今日、我が町の歴史研究家が訪ねてきて、市立図書館の持ち出し禁止の本で見せたいものがあると言うので、私の車で図書館に向かうことになった。車中で彼がこんなことを語った。「先日、オーストラリア国立図書館の司書と外国人墓地に行った際、彼女(司書)に手渡した研究論文を、蔵書にすると約束してくれたと言うことは、オーストラリア国立図書館で永久保管されるということであり、…と言う事は、あなたが図版(ビジュアル)部分の編集を手伝ってくれた訳だから、あなたの名前も永久に残るということになるね…」なるほど…言われてみると確かにそう言うことである。いや…とても光栄なことだ。私が30年前に作成した本は国会図書館(原則、すべての出版物は国会図書館に贈呈する義務がある?)や市や県の図書館に保管されているが、オーストラリア国立図書館となるとインターナショナルな響きがあって、確かに別の喜びを感じる。続けて研究家は語った。「二ヶ月以内に私は、オーストラリアに行くつもりだけど、良かったらいっしょに行きませんか?」いつか誘われると思っていた。昨年は横浜開港資料館。今年になって、長崎や徳島の文書館・図書館にも誘われ同行した。この旅の形態を、一般の人は理解できないと思う。ただただ、毎日机の上に積んだ書物を前にして必要な情報を探し続ける…観光なんてとんでもない。グルメなんて無関係の旅である。安宿に泊まり、喫茶店でモーニングを食べ、昼はうどん、夜も丼物…オーストラリアとなれば、うどんが図書館のデリのサンドイッチに変わるだけだろう。オーストラリアの観光オンシーズンに、太陽や海に全く縁のない、極めて地味な時間を過ごすことになる。彼にとって1週間から10日の間その生活を続けても日常に違いない。だが私にとっては非日常だ。もし海外での時間をとるとしても3日間くらいが限界だろう。しかし、行きたい。ウィリアムズコレクションの現物がみたい。知人の歴史研究家は私に研究家精神を植え付けながら、急所を突いてくる。

市立図書館で、古書のなかにあるグルーム氏が書いた絵のカラーコピーを済ませ、研究家との別れ際、「旅行については興味があります。考えます。」と私は答えていた。ストイックな旅行に美学を感じ始めている私である。