『旅人と労働者』 中世期と呼ばれるむかしのお話です。あるとき、一人の旅人がフランスを旅しているうちに建設中の建物の前を通りかかりました。旅人は立ち止まって石工の一人に話しかけました。 「あなたはどういう仕事をやっているんですか?」 この石工は不平たらたらで、仕事がきつくてかなわないと言いました。「おれはこの大きな石を単純な道具で切り出して、言われたとおりに組み合わせているんだが、暑さはひどいし、汗だくだ。それに背中が痛くてね。おまけに退屈でうんざりしているんだよ。きついばかりで、意味もないこんな仕事、引き受けなきゃよかった。」 旅人は二人目の労働者に、「あなたはどういう仕事をしているんですか?」とききました。 「妻と子どもらを養わなきゃならないのでね。毎朝、ここにきてこの大きな石を切り出して、言いつけられたように必要な形の石材をこしらえているんだよ。単純な仕事であきあきすることもないわけじゃないが、家族を食べさせていけるだけで、おれは満足なのさ。」 少し明るい気持ちになって、旅人は三人目の労働者にたずねました。 「あなたはどういう仕事をしているんですか?」 三人目の労働者は天を指さして、目を輝かせて答えました。「私は寺院を建てているんです。」 (出典不詳) 《世界中から集めた深い知恵の話100(女子パウロ会)より》 今宵・・・やすらかにおやすみください。 |