今の土地に引っ越してきた頃、来る日も来る日も朝の5時半に家を出て、急な丘をのぼる山道を、犬を連れて散歩していた。星が瞬き空気は澄み鳥の囁きもまだ聞こえない…そんな静寂のなか、毎日まっすぐな道の遠くのほうに初老の男性が見え、数分後に“おはようございます”と、互いに一言だけ声を交わしすれ違っていた。そんな朝の一コマが2年ほど続いただろうか…。 ある日、今ではどんなきっかけで道順を変えたか覚えていないが、今のルートに変え、もう5年ほど経った。 先日いつものように散歩に出たら、見知らぬ男性から“お元気だったんですね。”と声をかけられた。よく見ると以前に散歩の途中にすれ違っていたあの初老の男性だった。 懐かしく思った。 言葉を交わさなくても、同じ時間に同じ道を歩く人同士、お互いに共感できる思いが生まれるのだろう。 半年ほど前まで、私が通勤のため車を運転する山道の途中…、すごい勢いで山道を駆け上がってくる老人とすれ違っていた。最近その人の姿を見かけなくなった。お元気なんだろうか…。 またあの人の年齢を感じさせない走りを見てみたい。 お元気でいらっしゃいますように…。 |