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SOLILOQUY

ひとりごと

 
February 01, 2012 12:39:04

命日

カテゴリー: 日記
もうすぐ知人の命日がやってくる。彼は私の元部下であったが、人生経験の深い年上のこともあり誰よりも私の心中を察し、いろいろ教えてもらうことが多かった。

そんな彼が突然私に自分の過去を話はじめたことがあった。
「このことは、家内にしか話したことがないのですが、私は人を殺したことがあります…。」
決して法的な罪に問われることではなかったのだが…。

話はこうだった。学校を卒業した彼は新聞社に就職し、新聞ネタを探して町に出た。百貨店で万引きを見つけ問いただすと、一流企業の重役の父を持つ女子高生で、出来心と察し警察に突き出さずに放免したのだが、その日彼が新聞社に帰ると上席から、なにかネタはないかとせっつかれたもので、万引きの話を記事にしたと言うのだ。
悲劇の報せは、記事が載って間もなく飛び込んできた。彼は女子高生が自殺したことを知った。
彼は、その直後新聞社を辞め、以来全く別の道を歩んだ。女子高生の月命日には必ず墓参りを続けた。しかし、仏壇に手を合わすことは許されず、それでも毎月通い続け、50年経ってやっと誠意が通じ故人の家のなかに入ることを許されたと言うのだ。

彼が故人の仏壇に手を合わせることができて3年後、癌を宣告され、あっという間にこの世を去った。
誰しもが、自分には重い荷を背負っている。その荷をどうして彼が私に晒したのか、その理由はいまだに分からない。

彼が逝って3回目の命日がやってくる。私は、彼の笑顔を思い出しながら、仏壇に供えてもらう花を注文するため、花屋に足を向けた。

やすらかに、眠られんことを…。