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SOLILOQUY

ひとりごと

 
February 03, 2012 13:39:23

刀錆

カテゴリー: 日記
日本刀に興味があり収集している人は、怪しく光る輝きや焼き入れによってできた文様の美しさに魅せられ、より美しい刀を手に入れようとし、自分のものとなれば毎日取り出してみては手入れをするだろう。
刀に興味のない人が自分の家に、どんなに名の通った刀鍛冶が作った名刀があったとしても、倉庫の奥にしまわれ、錆びさせてしまう。

じつは、私の家にも祖父が手をかけていた刀が数本ある。しかし戦争を体験した父は刀の手入れをせず、従って私にその嗜みを伝えなかった。40年前、私は父に内緒で友人に刀を見せたことがある。私以上に刀剣の見識のない友人は、静止する暇もなく、興味本位で刃先の部分を親指と人差し指でつまんだ。人の脂が錆のもとになると知っていた私は思わず冷や汗をかいたが、手入れの方法を知らない私はそのまま箱のなかにしまいこんだ。

それ以来誰もその刀を見ていない。

今でも刀の錆びが気にかかる。私の人生のなかの忘れられない小さな汚点である。
父が逝って8年が経つ。近いうち取り出して確かめてみたいと思う。
そして、その時に手入れの方法を覚えるか、手放すか考えてみたいと思う。

物は興味のないものが持って手をかけずにいたら、ゴミ同然に違いない。
物を生かすも殺すも、持つ人のものへの思いによって変わるのだろう。

私から離れて行ったものたちが、誰か素敵な人のもとで輝きを取り戻せたと信じたい。