以前お話ししたことのある作家“稲垣足穂”の本を読んでみた。彼は1900年に大阪で生まれ、小学生の頃明石に転居し、青春期を我が町で過ごした。成人して東京と関西を行き来し、壮年期から晩年・・・1977年に結腸癌で他界するまで京都に住まう。どちらかと言えば関西をベースに活動した作家である。谷崎潤一郎同様、我が町の戦前の様子が多く散りばめられた作品が多いのかと思って楽しみに読んだのだが、このたび私が触れた作品では、ほんの少ししかなかったので・・・そこのところ、少々残念ではあったが・・・ただ、一人の天才に巡り合えたという思いだけは残った。神話・天文学・医学・心理学・飛行学?・科学・哲学…もちろん世界の文学に精通しており、おそらく英語を自由に操り・・・彼の生み出した多様な題材にその底知れない知識が光っていた。私が天才だと信じる作家“澁澤龍彦”に一目置かせ“三島由紀夫”との交流を持った稲垣は、やはり天才だと思う。それにしても1920年~1940年までの間に青年期を我が町で過ごし、その後大成した作家・画家がいかに多いことか・・・きっと阪神間には保守的な環境のなかにも想像力を解き放つ気風、そして新しいものを受け入れるおおらかさがあったに違いない。 さて、私の必要とした文学作品は読み終えた。次のステップに進むとしよう。 ここで一言付け加えると、私は私が天才だと思う作家の作品は、その内容の3~4割は理解できない。澁澤龍彦の作品を読もうとしても、いっこうに次のページをめくる事はない。私が理解できない作品を作る作家を、私が天才だと認めると言うことを告白しておこう。要するに私は自分のことを凡才だと自覚している。 ただひたすら凡人に理解できる物語を作りたいと思っている。 |