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SOLILOQUY

ひとりごと

 
September 10, 2010 21:59:34

未来

カテゴリー: 日記
私は、以前未来都市に住んでいた。海の上にできた人工島…化石燃料を燃やしながら走る公営バスのシステムはなく、公共交通機関は電気で専用レーンを走る乗務員の一人もいない新交通システムと数百メートル続くムービングウォーク…。人工的に盛り土された起伏のある芝生に浄水場から生まれる浄化後の再生水を利用したビオトープのある公園…。私が住んでいた部屋の窓からは、未来的建物の巨大なドーム状の屋根が見え、一方の窓から、夜になるとオレンジ色の煌々とした照明に浮かび上がる眠ることのない巨大クレーン群が見渡せた。この町から離れて8年が経つ。何度か訪れることはあったが、長居をすることはなかった。昨日、仕事の都合で半日滞在することになった。途中5時から9時までフリーな時間をもてたので思い出のいっぱい詰まった町並みを抜け空港島まで歩いてみた。ムービングウォークは閉鎖され、美しかった公園には雑草とゴミが目立ち、全てがくすんでいた。さらに歩いていくと、埋め立て後ずっと空き地だったところに、医療関連施設やスーパーコンピューター開発研究施設の建築途中の新しい未来を見つけた。未来は過去になる。未来は形が現れた時にすでに風化がはじまり、いつしか新しい波に埋もれていく…。同時に、新しい未来が常に産声をあげている…。すべては変化し消え、そしてまた生まれる。
未来都市に住み、そこで夢見た未来は、はかなく消えた。

空港島へ続く橋の上りは苦しかった。1時間あまりかけて辿り着いた。JAL撤退で以前より少し静かになった空港ターミナルビルで一息ついた後、誰も通らない静かな歩道を仕事の待ち合わせ現場のホテルへと歩き始めた。一直線に北へ伸びる橋を渡っていると、真っ暗な海から波の寄せる音が聞こえた。オレンジ色の街灯の下を黙々と歩き続けた。呼吸は荒くなりシャツは汗でびっしょり濡れた。目的地のホテルのバンケットルームに着いたのはちょうど21:00…。

往復12kmの小トリップ…翌朝、普段歩きなれない私の太ももの筋肉痛が昨日起こった現実の証として残っていた。今日、未来都市と呼ばれない場所で、私は新しい未来を目指している。