acchan.com恋愛お見合い - 無料の婚活サイト  どなたもログインしてません  

SOLILOQUY

ひとりごと

 
July 14, 2010 21:56:43

収穫

カテゴリー: 日記
朝起きると雨だった。不案内の山の中での移動が予想されるため家を出る前に、雨具の他、タオル、着替えと共にスイスアーミーの万能ナイフ、消毒薬に簡易包帯、おにぎりやお茶をリュックに詰め込んだ。10時に町の百貨店前で二人の研究家と合流した。昨日までの情報を伝え、どのルートで巡るかを確認した。本日のミッションは大きくは二つである。一つは、日本で歴史のなかから消滅しようとしている戦時中の敵国外国人の抑留施設跡(すでに施設はないはずである)に自ら立つという実地体験をすること…。このことについて少し説明しておくと、抑留施設というものは収容所とは異なる。収容所は捕虜(軍人)を閉じ込める施設であるが、抑留施設は一般市民を隔離する施設である。本日訪ねる場所は、戦争が始まるまでに日本から脱出できなかった一般市民の隔離施設である。この施設の情報はすでに日本から消滅しつつあり、今回オーストラリア在住の歴史研究家が当時その施設に収監されていた外国人の英語の日記や回想録のなかから存在を知り、研究調査しているもので、今後いつの日か本日の調査内容が彼女の発表する論文のなかの数行を飾るに違いない。もう一つのミッションは、身寄りなくカナダで永眠した一人の女性の墓を外国人墓地に墓参することである。3人の話し合いの結果、崩落事故のあった道がまだ通行できないため、谷に沿って山の温泉へ向かう街道を通ることになり、その途中に昨日私が電話した“実業学園”があることから、行き着けるかどうか不安が残るなかを第一目標として“抑留施設”へ向けて車は出発した。街道を反れ森のなかへ続く小道へと右に曲がり、しばらく進むと対向車を交わす余裕のない道が続くため一旦停止して進むか否か話し合ったが、ともかく学園まで行って話しを聞こうと山道を登り続けた。こんな偏狭の地に学園(養護施設)と名のつく施設があることが不思議でならない。ただそれを確かめることはこの度の目的にはない。なんとか学園までたどり着き、彼女(オーストラリア在住の研究家)と私とが職員に話を聞くため車を降りた。私は昨日電話で「施設のことは誰も知らない。」と素っ気無い返事をもらっていたので、今日はこのミッションの主人公である彼女に質問を任せた。すると「この山道を、街道からここまでと同じ位の距離を真っ直ぐ行った所にトンネルがあり、その向こうに施設があった筈だけれど、数年前にトンネルが閉鎖されていて今は行けない。」彼女は、質問を続けた。「トンネル通らずに先に行く方法はありませんか?」「トンネルの右側に山道があり、そこを行けば向こうに行けると思う。しかし最近通る人は無いと思うので、もし行くなら気をつけて行きなさいよ!」昨日の電話での対応とまるで違う答えが返ってきた。いくらフェーストゥフェースの力だと納得しようとしても、それだけではないようだ。歴史研究家が持っている損得抜きの粘り強さもあるだろう。いいものを見せてもらったと思った。大収穫を得て、車は悪路を登り続けた。目の前に工事用資材で封鎖されたトンネルらしき穴が見えてきた。  <つづく>