一人の芸術家が作り出す作品が、技術の熟練や重ねた人生経験によって晩年になるほど、優れたものになっていくとは決して思わない。私の個人的な見方とも言えるが・・・例えば小磯良平の晩年の絵画に描かれた女性像は魂の抜け殻のような魅力のない作品だ。流通する商品としての価値感から言えば、ある程度名前の売れた作家の作品は、名前だけで取引した方が画商にとって利益が確保される。しかし、いかに有名になった作家の晩年の作品でも駄作は駄作以外のなにものでもなく、若い時の青臭く一見欠点の見える作品でも優れた作品はあるはずで・・・その優れた作品は作家が死んで、当時の画商も死んだ後に利害関係のない人たちによって正当な評価が成される時がくるように思う。 人も、年を重ねるごとに優れた人間になるとは思わない。人生経験が未熟で知恵もなくても、もがき・・苦しみ、思い通りいかず・・・若さや、運命を恨めしく思う人生であったとしても、しっかり生きていれば、数年後に振り返って、或いはあなたが死んでから子供たちがその当時のあなたの人生を愛おしく大切なものと評価する時がくるかも知れない。 そう考えて、不器用でも日々を精一杯生きることが大切に思う。 残念ながら、今の私は・・・甘すぎる. |