同じものでも、タダでもらったものとお金を出して手に入れたものとは、価値が違うように思う。簡単に手に入ったものと苦労して手に入れたものでも、価値が違うように思う。モノの価値は金額だけでは換算できないようだ。 コンビニで、スーパーで、専門店で、ネットで…。今まで外国に行かないと手に入らなかったものも苦労せずに手に入る。 モノの価値は概して低下傾向にあるようだ。 だから、モノへの感謝の気持ち、モノを大切にする気持ちは誰かが教え伝えなければならない。 モノが自分の目の前にやってくるまでには、たくさんの人々からの愛と労力が注がれたことを…。 モノの価値とは表示された金額ではなく、自分が決めるものだということを…。 自分が、そんなことを伝える立場の年齢に入ってきたのだと肝に銘じておこう。 |
69才のマダムには、販促に関する強力な味方がいる。謎の京都人である。初めて会ってから4年以上経つが彼が何者か分からない。ひょっとすると彼は、これまでにも我々に自分の仕事について話してくれたのかも知れないが、いまだにマダムも含め、誰も理解できていない。 京都から新幹線に乗ってやってくる。IT関連と英語に精通している。食べることが好きで、京阪神で美味い店と聞けば一人でも食べに行く。時間に縛られる仕事はしていない。いつも笑顔で…マダムの店のホームページ・ニコニコ動画・ツウィッター・ブログの更新を作成登録段階から無報酬で引き受けている。何人もの女性と付き合っているが結婚は考えていない。悪人ではなさそうだ。彼なりにおしゃれ…色彩の趣味はいろいろあると思うが…カッターシャツはオーダ―メイド、靴や鞄の手入れを怠らない。それから少林寺拳法の有段者で、夜道で暴漢に襲われることを期待している。どこかの国のスパイかもしれない。私の知る彼のことをすべて書いてみた。 謎の京都人は、マダムに接触しながら、知り得た情報をfacebookで本国に報告しているかも知れんぞ。彼は笑顔で自分の素性を煙に巻いているのかもしれんぞ。 面と向かって“あなたの職業はなんですか?”と、近いうちに聞いてみようかな。 それが、話が早いかな? でも謎のままも、楽しいな…。 |
昨日、コーヒーを飲みながらマダムと話をしていると、宅配便が届きマダムが一旦外に出て大きめの段ボールを抱えて戻ってきた。開けてみると薔薇の鉢植えが現れた。“あら、誰からかしら…。”マダムはメッセージカードを見て“まぁうれしい。私がフレンチの店を経営していた時に、働いてくれていたアルバイトの女の子からだわ…当時からお母さんって呼んでくれていたの…今日は母の日なのね…、徳島から送ってくれたんだわ。”と、言って…私が店にいることを忘れたように花に見入った。 マダムは独身を通し、子供がいないけれど、ちゃんと思いのこもった花が届いた。 マダムが書いているブログに検索ヒットし、マダムが一人で店をしていることを知って、昨年も花を贈ってきたと聞いた。 贈られたマダムも贈った彼女にも、ほのぼのとした人柄の良さを感じた。 さて、私は昨日…実の母に何も贈っていない。 明日、遅ればせながらではあるが、母を訪ねて感謝の気持ちを伝えようと思う。 |
明治時代…私の町に、日本で最初のオリーブ農園ができた。明治時代に閉園したこのオリーブ園のことは、あまり市民に知られておらず、どこに存在したかを答えられる人も皆無であった。昨年、ある大学の農学部の教授の研究発表のなかで、農園の場所が特定され新聞でも話題になった。 今から、たかが百数十年前のことなのだが…明治時代に存在したと言う確かな記録が残っていない理由の一つに、当時オリーブというものの存在が日本で普及しなかったことがあげられるだろう。実際にはオリーブにつく害虫被害によるものだと思われるが…。また空襲による資料の焼失…。まさにこの度の教授の研究がなければ私の町のオリーブの話は永遠に人々の記憶から消えてしまっていたに違いない。 日本でオリーブが日常的な存在になってきた昨今、私の町でオリーブの樹を町ぐるみで植樹し育てようと言う動きがある。 その関係で私は、明日教授を訪問することになっている。 私達の町のDNAを蘇らせる研究をされた歴史学者ではない農学者に会うのが楽しみだ。 |
今日の午後、例の農学部の教授を訪ねた。招かれたところはある大学のゲストハウスで昭和初期に建てられた建物だった。 挨拶を交わすとすぐに和風庭園に案内された。一般には知られていない建物…、知られていないから素敵な建物だった。 “建築様式は昭和初期に流行ったスパニッシュ様式ですか?”と尋ねると、そうだとかえってきた。“実は私の住んでいた家が、戦後ユダヤ人が建てたスパニッシュ様式の洋館の私邸に和風建築を増築したものだったので、馴染があるんですよ…” この会話でお互い打ち解け名刺交換の前に話が弾んだ。 2時間半にも及ぶ話のなかで、互いの人となりが理解できた。 ものの最初というものは、こんな感じがいいと思う。数字のことは置いておいて互いの本質を知る。今日は充分な成果が得たと実感しながら坂道を下った。 私は研究者と話をするのが好きだ。子供のように純粋に話をして、年をとっても目の輝きが失せていない。話に駆け引きがないから自分をさらけ出せる。 “オリーブ”の計画はうまく進むと予感した。 |
昨晩、27才だと言うのに35才くらいに見える若い銀行マンを誘って食事に出た。最初に老舗の和食の店に顔をした。 2軒目に、1週間のうち5日は飲みに出るという彼のお薦めのショットバーに行ってみた。私の職場の直ぐ近くだが初めて行く店だ。 階段で2階に上がると洗練された内装の店が現れた。6~7mのカウンターと8人ほどが寛げるソファー席が1室あった。カウンターにはバーテンが3人…一番年上の40才半ばの男性に話を聞くと16年前に店を始めたオーナーだと分かった。 内装、サービス、聞かれた事への受け答え、グラス・器、フレッシュの果物を使用したカクテルの作り方、気の利いたチャージのおつまみ…どれをとっても隙のない店だ。“灯台下暗し”だと思った。 私達は互いに一杯だけ飲み、彼が勘定を払って外へ出た。 そして、仕事関係の相手と飲みに来る店ではない…と、悟った。 店に緊張感があり過ぎると会話に困る。素敵な女性と来たい店だと思った。 その後、オープンして14年目のレアな酒瓶が内装の全てと言う…葉巻の煙漂う男のバーへ行った。その店には酒好きの名だたる著名人が集う。 扉を開いたのは、何年振りだろうか? やはり一杯だけ飲んで外へ出た。 歩道には人気がないが、両店には客が入っていた。2店とも良い店だと思う。 私が、次回これらの店を訪ねるのは、数年先になるだろうが…、いつまでも同じ場所で営業を続けていてほしいものだ。 Good Barよ、永遠に…。 |
作成中の絵本の実寸モデルを歴史研究家Tに渡して2週間が経過した。Tが目を通して私のもとに返ってくるのが7月20日頃と言われている。その間…私の予定に大きな空白が開いてしまった。 今、“オリーブ”のことで動きはじめたのは…じつは時間ができたから…? 7月20日がやってくると、Tとの共同作成を継続して一気に仕上げるか、場合によってはTが協力を拒否し私が単独で作成するか、いずれにせよ完成させたい気持ちは変わらぬから、本の完成を目指して邁進することになるだろう。 さて、その時に“オリーブ”のことをどうしよう?言い出しておいて、ほっぽりだしたら自分でも人間性を疑う。 あまり先のことは考えずに、今できることに専念しよう。今までにも同時に幾つかの問題は抱えながらやってきたのだから…。 おそらく、芸術家とか研究者呼ばれる人達以外の…普通の社会性ある人間は、最低同時に三つくらい集中できることがあったほうがバランスの良い生活が送れるに違いない。 最近、私は暇過ぎたのだと、芸術家でも研究者でもない私は納得した。 じつは“オリーブ”普及のムーブメントを起こしたい…思う気持ちは、日に日に強くなっている。 |
昨日、20年ほど前に町の商業団体の会長をされていた方の家を訪ねた。彼は、その後ある会合での暴言がもとで団体から永久追放され、以後人前に出ることは無くなった。今では75才は越えているだろうか…。 私は、どんなに他人が悪く言おうとも、その人の優れた部分を見続けることができる人間だ。だから、今でも数年おきに訪ねて行って話をする。 彼は“私は、町の商売で功罪を犯した。私が最初にやり始めたために、同じことをやる人間を増やしてしまい、結局町が似非になってしまった。だから私は今やることは、本物のことをしたいんだよ…。”と言った。 私は“それを、今あなた自身が言うことがかっこいいと思います…。”と言った。すると彼は若い時のように目を輝かせて笑顔そみせた。 彼は、私がどんな人間かを知っている。私が彼の良い部分を見続けることができる人間だと知っている。思いどおりの私の反応に、彼は充分満足したのに違いない。 私は、彼から幾つもの新しい刺激を受けて、町へ下りて行った。 |
仕事場の近くに洋菓子屋ができた。当初は客もほとんどなかったが、そのうちオーナーパティシエがフランスの菓子コンクールのチョコレートの部門で金賞をとったことが知れると日に日に客足が伸びて行った。 私も何度か、賞をとったその菓子(チョコレートケーキ)を食べたことがある。おいしいとは思うが、少し私には甘さが強すぎるような気がして、わざわざ買いにいくことは無かった。 その店が土曜日と日曜日の午前中だけ、クロワッサンを焼いていると聞いた。フランスでは菓子屋がパンを作ることが普通かどうか分からないが、私の知る限り日本では聞いたことがない。売価の高い洋菓子を作っている菓子屋が、それに比べて安いクロワッサンを作っているのが不思議に思い、昨日焼き上がりの時間を待って店の入口をくぐった。 すでに、ほとんど売り切れていたが、残っていた6個を全部買った。食べてみると、バターの香りが強すぎる感もあったが、なかなか美味い。手の込んだ細工のできる菓子職人がパンを焼くと、こんなパンを作るのかと感心した。 近くには、美味いパン屋もあるから、どちらがいいかと言われても答えに困るが、たまには菓子屋のパンも食べたくなりそうだ。 なんだか、菓子屋の物づくりの姿勢をみたような気がした。ともかく自分が美味いと思うものを貪欲に作りたいに違いない。 だが、今のところ、クロワッサンだけにしておいてほしい気がするのだが、皆さん私の気持ちを察していただけるだろうか…? |