知人の器屋の主人はいつも笑っている。正確に言うと笑っているようにみえる。 彼は若い時に町興し事業で成功し、日本中を飛び回っていたと聞く。日本中の水族館の館長と世界中の名だたる水族館を見学して回ったこともあったと言う。館のリニューアルによる集客向上のためである。 社員も60人以上かかえる事業家だったようだが、私はその時の彼のことをあまり知らない。 どうして、事業が上手くいかなくなったか聞いてみた。“騙されたんですよ。”と、彼は笑いながら答えた。“それも、何度も…。”と続けた。 人生の経験が、その人の顔に刻まれるというが…、彼の笑みは苦い経験から身についたものなのか? それとも、いかにも人の良さそうな微笑みをしているから騙されたのだろうか? 私には分からない。 さて、私の顔は他人にどのようにうつっているだろう? 自分のなかで他人に騙されたという覚えはない。実は、自分で気が付いていないだけで何度か騙されているのだろうか? 類は類を呼ぶというけれど…私は、彼に輪をかけたお人よしかもしれない…。 でも、騙されたことないと思える人生は幸せだと思う。 |