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SOLILOQUY

ひとりごと

 
January 29, 2012 14:42:56

夜風

カテゴリー: 日記
昨晩マダムのお店で二か月に一度開かれるワイン会に参加した。相変わらずワインの説明を受けても覚える気持ちがないから、全く頭に入らない。かろうじて記憶に残ったことは、フランス北部のワインは気候が厳しいから渋みがあり、南部のワインは温暖な気候で育つから概してまろやか…ということくらいだろうか。ひょっとすると、このことさへ間違って覚えたかもしれない。
確かなことは、私に高級ワインを飲ませても、もったいないということだ。

マダムの店を早めに出て、今月で店じまいするというバーに行った。人の好いマスタ―が酒を作るこの店はある時期我が町の酒好き(遊び人)のたまり場になっていたのだが、マスター自身が年をとり時代の流れが変わり、徐々にお客の足が遠のいて店を閉めることになったのだろう。
我々以外にお客がいなかったらどうしようと思いつつ扉を開けた瞬間、然に非ず、以前ように熱気ある空間がそこにあった。カウンターにいた先客に席を詰めてもらい、やっとのこと時間がかかって出されたサイドカーを一気に飲み干し席を立てば、忙しくて行き届かなかったと詫びを言いにカウンターから出てきたマスターが、「どうも有難うございました。ここで失礼します…。」と見送ってくれた。

結局、私が店にいる間、この店が閉まるという話はだれの口からも出なかった。変えられないマスターの運命を知って、以前と同じように店でお金を使い、以前と同じように、また来るねと言わんばかりにマスターの顔を見に来た常連客が集っていたのだろう。
マスターもすべての客も、このままが続かないことを良く知っている。確かにこの店が大人の店だったことを思い知って、私は冷たい夜風の吹く石畳の歩道に立った。