私の元部下だった男が、一昨年の秋に独立してイタリア料理店のオーナーシェフになった。なんとか1年頑張ってやってきた昨年の秋に、やはり私の部下で、訳合って故郷の山口に戻った男がもう一度都会で働きたいと言ってきて、シェフのレストランに働きにやってくると聞いていた。 今日、ランチに行って、その店の扉を開けたら、6年ぶりに会う元部下が私を迎えた。彼は今日から働き始めたようである。私も久しぶりに店を訪ねたので、まさに偶然だ。しかもランチの時間が終われば私に挨拶にくるつもりだったと言うのだ。 シェフを前にして、山口から出てきた部下に“シェフが、あなたが働きに来るから、頑張って売上倍にするぞ…と言ってたよ。”と言ったら、シェフが“本間に頑張らなあかんのですは…。”と口をはさんだ。 店を出る間際に“ここへ来る回数を倍にせなあかんな…。”と、私が言ったら、“本間…頼みますは…。”と、二人の視線が語っていた。 扉が閉まった後で、“でも、二倍は来れんなー。”と心のなかで呟いた。 偶然という必然のひとときだった。 ともかく、今日もいい一日のようだ。 |