昨夕、会社に戻るとデスクの上にピアノコンサートのチケットが2枚置かれていた。ピアニストが誰なのかと添付されていたパンフレットのスチール写真を見みると、すごい美人である。名前を見て彼女とのロマンスを思い出した。 数年前に海外(ドイツに始まりイギリス、ニューヨーク、現在はモスクワ)で生活している彼女が久々に帰国した折、後援会の人たちを集めたパーティーを私の管理するホールでおこなったことがあり、その際私は、成行きでワインをサービスする役を引き受けた。 パーティーが終わり、ホールのバックヤードで私がグラスを洗っていた時、扉を開け入ってきた彼女は、素晴らしい会になったと…感謝の言葉を添えて握手のために右手を差し出した。 洗い物で手が濡れていた私は、手が濡れているので気持ちだけをいただきます…と答えたら、彼女は右手の小指を一本立てて私の目の前に差し出した。 私も、彼女に小指を差し出した。すると彼女の繊細な小指が私の小指にきつく絡んできた。 海外生活の長い彼女にとって、その行為が特別の感情の表現ではないことは、分かっているのだが…。私にとって、一瞬のロマンス…。 その時の小指の感触が今でも忘れられない。 チケットの公演時間に目が向いたときには、当日の、ちょうど終焉間際となっていた。 私のロマンスの思い出は、すぐに封印されることになった。 |