私の元部下が、今週の金曜日、10月7日に念願のオーナーシェフの店としてイタリア料理店をオープンさせることになり案内状が届いた。部下と言っても以前私が料理人であったわけではない。私は以前事業の一環として、イタリア料理・フランス料理・アメリカンダイナー・カフェ等を経営する立場にあっただけで料理人の直属に上司ではない。私の主たる事業は他にあった。 彼は私の下にいた数多くの部下のなかでも記憶に残る人物である。 料理学校を卒業してすぐに我々のレストランに就職したが、3年ほどで止め有名店で働いてみることを目的に点々と働く厨房を替えた。途中で一度我々の店に戻ってきたことがあって副料理長まで上ったが、自分の興味のある店から誘いがあると、すぐに去って行った。 これが独立を目指す料理人の典型的な生き方である。 店を持つ人間は若い時から働く姿勢が違う。 彼はちゃっかり数か月前に私のもとを訪ね、食器やら厨房器具をせしめて行った。 甘えられると応援したくなるものだ。 店を始めるには厳しい時期ではあるが、彼ならなんとかやっていくだろう。 自分の部下が独立していくケースはいくつもあったが、彼の出店が最後になるだろう。 私が飲食業から離れてすでに3年近くになるが、経営する立場ではなく、これから彼の店の一般客として末永く楽しませてもらいたいと思う。 |