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SOLILOQUY

ひとりごと

 
October 04, 2011 14:17:51

語部

カテゴリー: 日記
先日雨が上がって急に気温が下がった日、久しぶりに港に行った。土曜日だと言うのにそれほど人出がない。潮の匂いの薫る海沿いの公園を歩いていると、震災のメモリアルとして岸壁が崩れた状態をそのまま保存しているモニュメントを見つけた。そこを見下ろす海にせり出したブリッジを歩いていると当時の記憶が蘇ってきた。
考えてみれば町の中でここ以外に震災当時の情景をそのまま残している場所なんて、思い当たらない。
ほとんどすべての場所は“早期復旧”という旗印のもとに、まるで間違ったところを消しゴムで消去して、新たな文字を書くように生まれ変わってしまった。

だから、このモニュメントはとても大切な場所に違いない。

自然災害や戦争は50年経てば語り継ぐ人がいなくなり、百年経てば遠い昔の物語になってしまうに違いない。

私は震災の時、埋立地の高層マンションに住んでいた。電気が切れ電話がつながらず、すべての情報が絶たれた時、現状を把握しようと非常照明の灯る階段を下り、地上に下り立った。その時、目の前で“液状化現象”が起きるさまを見た。
いまでこそ“液状化現象”は一般の人にも知られた現象だが、当時は誰も何が起こっているのか分からなかった。理解を越えた現象が起きると人は黙ってしまうことを、その時知った。

私も震災の語り部に違いない。私がこの話を人にすることができるのはあと何年だろう。20年だろうか、30年だろうか…
東北の人たちは、今から自分が語り部であることをひと時も忘れず生きてほしいと思う。百年後の子孫のために。