一月ほど前…芸術文化センターでのリサイタルに向けてのリハーサルの際にギターの先生の演奏風景を撮影した。その時の写真を先生がいたく気に入ったものだから、翌日リサイタルのプログラムのデザインを依頼された。それも気に入っていただいたようで…、とうとう録音も私の知人の録音技師を紹介することになった。先生は私の感覚・感性・交友関係まで信用なさったようだ。昨日私の管理下にあるホールで録音が行われた。私は先生と録音技師のやりとりを一部始終見ていた。先生は、はじめて会う録音技師の能力を量って少し距離をとりながら接しはじめた。弾き始めの先生は、いつもと違う雰囲気のなか、少し緊張しているせいか、思うように音が出ていない。演奏場所を変えたり技師に細かな注文を浴びせた。技師はマイクの位置、角度を触り、本数を調整し、ギタリストの希望する音の録音体制を整えていく。3曲目くらいから音が滑らかに前へ出るようになり、技師に対する注文は消え、奏者は演奏のみに集中し、以後の録音はテイク数も少なくあっという間に終了した。仕事を終えた二人はやり遂げた充実感を共有していた。プロ同士が短時間で信頼関係を築いていく様子をまじかで客観的に観察でき、考えるところの多い昼下がりのひとときであった。私にとってギター演奏を聴くことよりも、信頼関係の構築のほうが気になるようだ。 どうも私にはギターのプロにはなる資質はなさそうだ。 私が初めての結婚をした時、今から考えれば、世間知らずのまだ子供で、教科書のなかの結婚概念しかなかったように思う。人生のアマチュア同士が結婚という人生ゲームで遊んでいた…って感じ。 伴侶への心からの思いやりを持ったプロの男として、信頼関係を築きあげた結婚という時間を、まだ巡り会えない女性とともに過ごしてみたい…と、最近切に思う。 |