acchan.com恋愛お見合い - 無料の婚活サイト  どなたもログインしてません  

SOLILOQUY

ひとりごと

 
May 26, 2011 12:53:23

歌声

カテゴリー: 日記
   『雪のひとひらの重さ』

 真冬のある日、丘の斜面に雪が降っていました。
 小さなネズミが長い冬眠の合い間に、巣穴からチョロチョロと出てきました。小ネズミは眠そうにまわりを見まわし、頬ひげをブルッとふるわせて、もう一度、穴の中にもどって寝ようとしたのですが、真っ白な冬景色のどこかから小さな声が呼びかけたのです。
「こんにちは、ネズミさん!眠れないの?」
 小ネズミの頭のすぐ上のはだかの小枝に一羽の小鳥が寒そうにふるえていました。
「やあ、ミソサザイさんか!」と小ネズミは話し相手ができたと、うれしそうに答えました。あたりの寒々とした風景にゆううつになっていたのです。「ちょっと息抜きに出てきたのさ。もどって、これから冬中、一眠りするつもりだよ。」
 話し相手がいるのはいいものです。小ネズミとミソサザイはマツの木の低い枝の下にうずくまって、おしゃべりを楽しむことにしました。
「ねえ、雪のひとひらって、どのくらいの重さだろう?」とだしぬけに小ネズミが聞きました。
「雪のひとひらなんて、重さがあってないようなものだと思うわ」とミソサザイは答えました。「ほとんど意味がないんですもの。重さだってほとんどありゃしないのよ。第一、雪のひとひらなんて、重さをはかろうにも、はかれやしないわ。そうでしょ?」
「それはちがうよ」と小ネズミは言いました。「去年の冬の、ちょうど今ごろのことだった。ぼくは冬眠の途中でめをさまして、新鮮な空気をちょっと吸おうと穴からでてきたんだ。仲間もいないし、ほかにすることもなかったから、ぼくはここにすわって、落ちてくる雪びらを数えはじめた。雪びらはこの木の枝に乗っかって真っ白な毛布で松葉をおおっていた。二百四十九万二千まで数えたときだった。その次のひとひらが枝の上にのった。そうしたらどうだろう?枝が地面にグッと垂れ下がって、上に積もっていた雪もいっしょに滑り落ちたんだよ。だから雪のひとひらの重さだって、ばかにできないじゃないかい?まったく意味がないわけじゃないのさ。」 
 ミソサザイ自身、ごく小さな鳥で、こんなちっぽけな自分がまわりのひろい世界に影響をおよぼすなんて、考えたこともありませんでしたから、小ネズミの言葉におどろいて、長いこと考え込みました。「もしかしたら」とミソサザイは胸のうちでつぶやきました。「あたしの小さな歌声にも意味があるのかもしれないわ。そのために何かが変わることだって、ないとは言えないんじゃないかしら。」  (出典不詳)
   《世界中から集めた深い知恵の話100(女子パウロ会)より》


今宵・・・やすらかにおやすみください。