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SOLILOQUY

ひとりごと

 
February 07, 2014 16:07:07

割勘

カテゴリー: 日記
今日の午前中、小説の挿絵の件で歴史研究家の女性と打ち合わせをした。もともと小説家志望である彼女が書いた研究論文をもとに自身で書き上げた、居留地時代に実在したあるドイツ人貿易商の物語が、タウン誌の編集長の目に留まり、次刊から連載されることになった。
以前から面識のあった研究家と編集長の思いが一致して、私に描いてほしいと声がかかったもので、今日が最初で最後の彼女との打ち合わせである。前日にメールで原稿を送ってもらって目を通していたとはいえ、締切が10日であるから、かなりの急ぎの仕事だ。

彼女に指定だれたドイツ菓子屋のカフェの一番奥にある‘家族の肖像の間’で打合せを無事終えた。

彼女は、原稿料がでないかもしれないと申し訳なさそうに言った。私は“だいじょうぶです。いいチャンスをいただいたと思っています。タウン誌の挿絵作家は町では有名な人ばかりですから…、これは私が目指す仕事を成し遂げるとめに、今やっておかないといけないことだと思っています。”と、言った。彼女は“ありがとうございます。そう言っていただいたらほっとします。”と、頭を下げ、“ここのコーヒの代金は、お支払いさせてください。”と申し出たが、私は“いえそれはダメです。自分の分は払います。”と遮った。すると“そうですね。そうしないと会えなくなりますからね…。”と彼女は納得した。

私が歴史研究者と付き合うようになった初めの頃、“おごり、おごられ…の関係になってはダメだ。割り勘にしないと次に会えなくなるから…。”と、ある年配の研究者から教えられた研究者同士の掟である。
やはり彼女も、この掟を実行する研究者であると分かり、今までよりも親近感を感じた。

私は研究者ではなく、絵描きでもないけれど、研究者同士と話していると、いつもほっとする思いがするのだ。