私の住んでいる家の近くには、一つの中学校と二つの小学校と一つの幼稚園がある。正確に言えば幼稚園は“あった”と言う過去形で・・・私の町に子供が少なくなったせいか今年の4月に隣町に引っ越して行った。そのうち小学校も統合するようになるのだろうか。家の南側の窓からは岡の上にある中学校が見えて、夕方窓を開けていると、コンクールでも優秀な成績をとるブラスバンド部の楽器の音が聞こえる。北側にあるコープのさらに北側にある小学校方面へはあまり行く機会がなく、私にとってこの学校の存在感は極めて薄い。西側にあるもう一つの小学校は、毎朝の散歩のコースで校門の前を通っているし通学する学生達の姿も見慣れているため親近感がある。今日の夕方、私は玄関に佇み目の前をボーッと眺めていた。すると西側の民家の屋根越しにコンクリートの低層階の建物が目に入った。一瞬何の建物か分からなかったのだが、よくよく考えてみると、その方角には小学校がある筈で・・・数秒後に納得した。今日、家から小学校が見えることを始めて知った。それにしても私がこの家に引っ越して来てもう5年になるが、いったい目の前に何を見ていたのだろう。家族にも訊ねてみたが、やはり誰も見えることを知らなかった。 私は、目の前の人のどこを見ているのだろう。正面を向いていても、実はその人の数%しか見ていないかも知れない。“ちゃんと見ている”なんておこがましくて、まだ分からないから、“もっと見よう”と向かったほうが賢明に思えた。 一度見えた小学校は、明日もその方角に見え続けているだろう。念のため明日の朝、確かめておこうと思う。 |