町を歩いていて、ギャラリーのショーウィンドゥに飾られた一枚の絵(版画)に目が留まった。なかなか洒落た私の好きなタッチの作品だったので、部屋の中を覗き込んだ。すると展覧会の主催者と話していた一人の老齢の女性(声楽の先生)に名前を呼ばれた。さらに歩を進めようとしたが、異常を感じ立ち止まった。ギャラリー内に展示されていた額が全て同じ傾きをもって壁に掛けられているのだ。額と額は平行だが、すべての額と床は平行ではない・・・思わず震災を思い出した。激震の当日、町へ出た私は崩れかけた建物と倒れかけた電信柱を前に、めまいを覚え吐き気をもよおしたあの日の記憶が蘇った。知人の女性を前に「この部屋は異常です。私は入れない。」と言って外へ出た。 私の平行感覚を狂わせたあの日の記憶が15年経過した今も私に絡んで離さない。それにしてもギャラリーの主催者(作家本人ではないと思う)は、預かった(販売目的か?)作品をもっと丁寧に扱うべきだと思う。 声楽家の先生には、私が入らなかった理由をちゃんと説明しとかなくては・・・ |