20年程前、ある大手ゼネコンとビル建築の仕事をしたことがあった。設計者が京大主席卒業で直後に部長に昇格したため彼自らが手がけた実施設計(自ら図面を引く)最後の作品、構造計算担当者は阪大主席卒業、現場監督も優秀な人で・・・建築チームとしては最高のメンバーが揃った。 あるとき、いやな顔され拒絶されるだろうと思いつつ、施工段階でその時点ではかなりきつい設計変更を要求したのだが、言った私のほうから控え気味に「今からだと難しいでしょ・・・」しかし返ってきた答えは「出来ないことはありません。工期が延びる可能性と、工費が上がる可能性がありますが・・・」 この時から“人から依頼されて絶対に不可能とは言わない”ことが私の教訓になった。“出来ない”と言う答えはプロじゃない。 その時の設計者は、残念なことに4年前にすい臓がんで亡くなった。 その時の建物は今も堂々と威容を誇っている。 そして私の心にもその心意気が息づいている。 |