すすき 工藤 直子 すすきが しんしんと のびて 秋になると あそこ‥‥‥あそこ‥‥‥ あそこ‥‥‥と すすきは 風のゆくえを指さす すすきの指にさそわれて 人々は 頭をめぐらせ ついに おおきな空をみつける 詩は、ふだんの生活のなかでは、考えつかないような、描かれかたをすることがよくある。 すすきが揺れているのを見たとき、風が吹いてすすきを揺らしているのだと、あらためて考えることもなく、そのように思うのではないだろううか。 それを、この話者は、すすきが風の方向を示していると見るのだ。 秋になったから、すすきが伸びるのではなく、すすきが伸びたので、秋になったとも言っている。 この言い方は、そんなにおかしくは感じない。 桜が咲いたから、もう春だなとも、言ったりする場合もある。 しかし、すすきが揺れて、〈風のゆくえを指さす〉と言われたとき、ハッとするのではないだろうか。 そういえば、さっきも、すすきが伸びて秋になると、言っていたなあと、あらためてその見方に注目することになる。 それならばと、その先を読むと、 〈 ついに おおきな空をみつける 〉 となっているではないか。 空の大きさをあらわした詩は、いままでにも数多くあったが、その大きな空を、〈 ついに 〉見つける、とあらわした詩はなかったのではないだろうか。 詩の世界を味わうためには、思わずハッとするような書かれかたをしているところに注目してみると、深く味わえる。 |