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ともだち塾の文芸日記

 
2009-04-16

カテゴリー: 日記
  木   草野 心平

葉っぱをおとした。
冬の木はいい。
裸の木々のすがたはいい。
ごつごつした古い木などは特にいい。
硬くて落ちついていて実にいい。

霜柱にかこまれて。
寒さのなかにたっている。
裸の木々の美しさ。

木々や幹のなかを。
力が流れているような気がする。
夢がいっぱいつまっているような気がする。
白い炎が燃えているような気がする。



 草野 心平は、独特な詩世界を持った詩人だ。

 「木」の詩は、葉を落とした冬の木が描かれている。
 この詩の話者は、冬の木が〈いい〉と言っているのだが、私なら、緑の若葉を豊かに繁らせた初夏の木のほうが、いいと思う。
 なぜ、この詩の話者は、冬の木が〈いい〉と思うのだろうか。

 3連で、

〈 夢がいっぱいつまっているような気がする。
  白い炎が燃えているような気がする。   〉

と言っている。

 〈 葉っぱをおとした。
   裸の木々     〉

に、なぜ、

 〈 夢がいっぱいつまっているような
   白い炎が燃えているような    〉

気がするのだろうか。

 〈 葉っぱをおとした。
   裸の木々     〉

であっても、決して枯木ではない。
 だから〈 冬の木 〉が〈 いい 〉と言っているのだと思う。

 枯木も、葉っぱを落とした裸の木だ。
 でも、〈 葉っぱをおとし 〉ていても、〈 裸 〉であっても、枯木ではなく、春になれば芽吹き、若葉を繁らせていくであろう〈 冬の木 〉だから、〈 いい 〉と言っているのだと思う。

 枯木ではなく、生きている〈冬の木〉だからこそ、
芽を出す、

 〈 夢がいっぱいつまっているような気がする。 〉

のだろうし、
葉を繁らせる

 〈 白い炎が燃えているような気がする。 〉

のだろう。

 私が、この詩のなかの〈 冬の木 〉ということばと比べた枯木は、この詩のなかには出てこないことばである。
 詩の世界をイメージするとき、その詩には書かれていないことと比べることによって、その詩が、より豊かにイメージできることがある。

 低学年や中学年では難しいかもしれないが、小学校の高学年になれば、その詩に書かれていないことと比べて、その詩をより豊かにイメージすることも、できるようになるのではないだろうか。

 私も、冬の木が好きになってきた。