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ともだち塾の文芸日記

 
2009-04-08

おちば

カテゴリー: 日記
  おちば   三越 左千夫

おちばを ことりにして
そらへ  とばしたのは
いたずら きたかぜ

おちばを ふとんにして
はるまで ねるのは
やまの  どんぐり

おちばを さらにして
ままごと したのは
ふたりの いもうと

おちばを しおりにして
ぼくは  ほんの あいだに
あきを  しまいます



 「三越左千夫少年詩集」「三越左千夫全詩集」などの詩集がある三越左千夫は、子どもの詩をたくさん書いた詩人だ。

 「おちば」は、《条件》という考え方をとおしてみると、より深く味わうことができる詩である。

 落葉とは、いうまでもなく枯れた葉であり、なんの役にもたたないもの、むしろ厄介なものというのが、一般的な見方だ。

 その落葉を、
  きたかぜは     ことりにして     とばします。
  どんぐりは     ふとんにして     ねます。
  いもうとたちは   さらにして      ままごとをします。
  ぼくは       しおりにして     ほんのあいだにしまいます。

 つまり、ふつうは役にたたないと思われているものを、りっぱに役だつものにしているのだ。
 それだけではなく、それぞれの人物たちの、目的に合うように見ることによって、落葉に多様な価値を見いだしているのだ。

 そのときに、人物たちに合うように見る、ということが大切だ。
 どんぐりが、春まで寝るのに、落葉を皿と見るわけがない。ふとんだからこそ、春まで寝ることができるのだ。
 つまり、どんぐりは、寝るという条件があるから、落葉をふとんと見るわけである。

 これは、ほかの人物たちもおなじだ。それぞれの人物の、条件に合ったものとして、落葉を見たからこそ、役にたたないと思われていた落葉が、りっぱな価値をもって、役だつことができたのだ。

 条件にそってものを見れば、人物たちにとっても、落葉にとっても、役にたたないと思われていたものが、新たな価値をともなって、役だつものになるのだ。

 このように、ものごとをみるときの、《条件》という考え方は、ものごとの価値がわかり、さらに、あらたな価値をみいだすことのできる、わたしたちが生きるうえで、大切な考え方なのである。