コスモス 佐藤 義美 みんなで みどりの 手をくんで 台風と たたかって 花を 高く まもりました。 青い空だけかとおもったら 遠い山も しずんでいました。 白と赤の花の中。 列車をひいて駅についた 電気機関車を、 コスモスが さわっています。 佐藤 義美は、「いぬのおまわりさん」の作者で有名な、童謡や子どもの詩をたくさん書いている詩人だ。 詩の表現方法のひとつに、擬人化がある。 擬人化には、二つの方法がある。 そのひとつは、植物や動物が、人間がするように、話したり考えたりして、人物化させる方法だ。 もうひとつは、植物や動物の様子を、人間がする行動のように書いてはいても、あくまでも、植物は植物であり、動物は動物であるという書き方だ。 「コスモス」の場合、 〈みんなで みどりの 手をくんで 台風と たたかって 花を 高く まもりました。〉 〈コスモスが さわっています。〉 となっているが、顔や手足を持った人物というよりも、植物であるコスモスが、人間のように見えている、という擬人化だ。 詩を読むとき、その詩のなかの、あることばに注目して、あるいは感動して読めば、その詩のイメージを描きやすいということがある。 「コスモス」の詩では、 〈花を 高く まもりました。〉 ということばに、感動をおぼえる。 この〈高く〉というのは、位置的な高さよりも、「気高く」「意気高く」と言うときの、精神的なものが表されている。 〈花を 高く〉〈高く まもりました〉 という、前後のことばとの響合いも、位置的なものよりも、精神的なものを感じさせる。 1連では、自然の脅威とたたかったコスモス。 2連では、風景のなかのコスモス。 3連では、人工的な機関車と対比的に描かれているコスモス。 どのコスモスも、「高く」自分を持ち、美しい花を守り、風景の中に生き、好奇心を失わずにいるコスモスたちだ。 |