19年振りに函館空港に降り立った。前回この地を訪れたのは私が経営していたフレンチレストランの料理長の結婚式に主賓として出席するためであった。昼の披露宴に間に合うように朝早くこちらを発って、披露宴の終了後、函館山に夜景を観に行っただけで翌朝には空港・・・とんぼ返りの旅であった。 その2年後、料理長は退社し、しばらくして“タトゥー”というレストランのシェフとして東京へ移っていった。この度の旅の目的の一つに、16年振りに彼に再会することがある。私と6才しか違わない、まだ未熟な二人の間で、彼が東京へ発つ前にもう少し話をしていなければならないことがあったのでは・・・と、長い間心残りだった。 驚かせよう思い・・・妙な気遣いをさせないように、彼の経営するレストランに偽名で予約を入れた時間より少し早めに扉を開けた。「エーッ」という言葉が、厨房から聞こえ続いて「まさかーエーッ」・・・ 久方ぶりの出会いは、彼に思い通りの驚きを与えたようだ。 あとは、友人との再開のように当時の記憶が蘇って話しをした。しかし立て込んでくると話もままならず、ホテルへもどったが、彼から電話が入り翌日の朝市で彼の息子もいっしょに朝ごはんを食べることになり、食事をしながら私の16年間の乱高下の生き様を話した。この年月の間に彼にも私の知らぬ山や谷があったのだろう・・・友人のように話をした。話し足らなかったことがいつの間にか埋まったような気がした。 私と彼は、やっと友人になれたのかも知れない。私の旅の目的が一つ達成された。 |