日本のトラピスチヌ修道院の最北端である函館のトラピスチヌ修道院を訪ねた。函館の中心部を九時半にレンタカーで出て、30分程で到着した。1898年にフランスからやってきたという8名の修道女によって設立された修道院の門をくぐれば、そこには別世界があった。カメラを片手にした大勢の観光客が大声で楽しそうに徘徊している。ただどの人も中国語を話している。まさにそこは日本ではなく中国だ。違和感を感じながら施設を見て周り、有名なクッキーや飴などのお土産を売る売店に入ったが、入り口正面に修道女達の生活を特別に撮影許可されたカメラマンの写真が展示されており、私は買い物のことは忘れ、飾られていた写真を1枚づつ丁寧に見て回った。そしてやっとここが聖地であることを感じることができた。マリアの像があるからではなく、厳しい戒律のなかで生きる彼女達を感じることができたからであった。私は、献金箱にお土産を買うために握っていた札を入れ、写真集を買い求めた。売店から外に出ると中国人の団体は一人もおらず、爽やかな静寂があった。 私は門を出たとき振り返り、手を合わせ「ありがとうございました。」と心のなかでつぶやいた。この度の旅で、もっとも心が安らかなひとときであった。 |