おれはかまきり かまきり りゅうじ (工藤 直子) おう なつだぜ おれは げんきだぜ あまり ちかよるな おれの こころも かまも どきどきするほど ひかってるぜ おう あついぜ おれは がんばるぜ もえる ひをあびて かまを ふりかざす すがた わくわくするほど きまってるぜ 「おれはかまきり」という詩は、工藤直子の詩集「のはらうた」のなかのひとつの詩だ。 「のはらうた」は、野原にいる、動物や昆虫、風や雨までもが、自分を主人公にして書いた詩を集めた詩集だ。 つまり、それぞれの人物たちが、自分の条件をもとにして、詩を書いた(話した・つぶやいた)詩集だ。 それぞれの人物の詩は、ほんとにその人物ではなくては、とうてい書くことができない、それぞれの人物特有の、詩の世界になっている。 ためしに、「おれはかまきり」のことばを、変えてみますと、カマキリのイメージとは、ぜんぜん違う詩になってしまう。 はーい なつだよ ぼくは げんきだよ あまり ちかよらないで ぼくの こころも かまも どきどきするほど ひかってるから はーい あついね ぼくは がんばるよ もえる ひをあびて かまを ふりかざす すがた わくわくするほど きまってるだろ もとの詩にくらべると、こっけいな感じすらする。 人物の条件と違うことばで書くと、こんなにも違うものになるのかということを、この詩人は、短い詩のなかで、まざまざと描きだしてくれている。 もちろん、作者の工藤直子は、「条件が・・・」ということを考えて、この詩を書いたのではないと思う。 読者が、《条件》という考え方でみたから、その違いがはっきりみえるのである。 |