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ともだち塾の文芸日記

 
2009-03-16

結婚

カテゴリー: 日記
  結婚   新川 和江

呼びつづけていたような気がする
呼ばれつづけていたような気がする
こどもの頃から
いいえ 生まれるずっと前から

そして今 あなたが振り返り
そして今 「はい」とわたしが答えたのだ
海は盛りあがり 山は声をあげ
乳と蜜はふたりの足もとをめぐって流れた

ひとりではわからなかったことが
ふたりではわけなく解ける この不思議さ
たとえば花が咲く意味について

はやくも わたしたちは知って頬を染める
わたしたち自身が花であることを
ふたりで咲いた はじめての朝



 新川和江は、1929年生まれで、詩作のほか、再話・伝記・海外児童文学の紹介などされている詩人。主な詩集に「野のまつり」がある。

 「結婚」は、中学生以上の子どもたちに、ぜひ読んでもらいたい詩だ。
 いま、子どもたちのまわりには、劣悪な性情報があふれている。
 ひるがえって、子どもたちに正当な性教育をしているはずの学校でも、「生殖教育」「性器教育」をしているとしか、私には思えてならない。
 性教育とは、まさしく人間教育であるべきだ。人間としてのよろこび、人間としての生き方、その一分野として、性のことがあるのだと思う。

 〈そして今 あなたが振り返り
  そして今 「はい」とわたしが答えたのだ〉

この二人が結びつき、

 〈はやくも わたしたちは知って頬を染める
  わたしたち自身が花であることを
  ふたりで咲いた はじめての朝〉

 この詩の世界には、「援助交際」などというものが入り込む余地は、微塵もない。
 そして、

 〈ひとりではわからなかったことが
  ふたりではわけなく解ける この不思議さ
  たとえば花が咲く意味について〉

という、人間と人間との、結びつきが生まれるのだ。

 そういう結婚、そういう結びつき、そういう性を、子どもたちが知ってほしい。
 劣悪なものほど、より刺激的になっていく。だから、思春期の子どもたちが、興味をもち始めるのも、無理からぬものがあるとは思う。しかし、とりこまれてしまわないようにしてやるのが、大人の責任ではないだろうか。
 「結婚」のような詩を読めば、人間としてのよろこびの性に、感動するのではないだろうか。

 家庭では、学校でしているような「生殖教育」「性器教育」ではなく、「結婚」のような詩を間にすれば、子どもたちと、結婚とは、人間と人間の結びつきとは、さらに性のことについても、話し合うことができるのではないだろうか。