さすがは、直木賞受賞作。いわゆる、勝ち組と負け組の「対岸」に位置する二人の物語が過去から現在に向けて交差する。書き方が上手い。葵の過去が語られているのに対して、小夜子の過去が描かれていない点が少し不満。
良い意味で女性にしか書けない小説だと思う。しかし、本当に対岸なのだろうか?女性には出産という年齢に縛られる制約がある点が男性と違うのだが、constrastという意味での対岸ではないと思う。むろん、hostilityという意味でもない。勝ち組、負け組も短絡的、近視的見方でしかないと思う。
commercialな意味でのフレーズとしては不愉快とまではいかないが、適切ではないけれも、インパクトは見ろめる。自分自身のアイデンティティを何かのグループに帰属することにより得ようとする人には良いかもしれない。人生、勝ち負けじゃなくて、自己実現だよっていうメッセージを込めて欲しかった。 |