私の仕事場の裏側から見える景色だ。
私は、この場所で生まれた。子供の頃、省線(現在のJR)の駅が見え、ホーム越しに港に停泊する船のマストが見えた。
年々ビルが建ち、雑然とした町になっていく。直線でできた建物が、どれだけ殺伐とした風景を作りだしていることか…。
人間は光以外には自然界には存在しない直線を生み出し、上へ上へと積み重ねた。
わたしが山道を通ることが好きな理由は、オゾンを欲するからだけではなく、直線のない世界に安らぎを求めるからかもしれない。
私が生まれた地から離れる時期がもうすぐやってくるのだと、自分に言聞かせる。 |