一昨日の夜の8時半頃、マダムの店に日本語がしゃべれない東洋人がやってきて“パスポートと財布を紛失して困っているので、シンガポールの父親に電話をかけたい。ついては5000円貸して欲しい。”と、あまり上手くはない英語でマダムに話しかけてきた。マダムは、それなら大使館を訪ねるべきだと言ったら、大使館は東京にあって遠すぎるし、警察や教会にいっても取り合ってくれないので困っている答えたそうだ。 男はノートに自分の名前とID番号と称する数字と父親の経営するシンガポールの法律事務所の住所と名前とメールアドレスをマダムにに差し出し、マダムは5000円を渡し自分のメールアドレスを教えた。男は深々と頭を下げその場を立ち去った。 翌日、午前中に男の父親から英文のメールがマダムに届いた。“息子に340000円送金した。その中かから50000円をあなたに渡すように命じた。現在息子はお金がないからホテルに泊まれない。もうすぐお金が届くから後払いで泊まれるホテルを紹介してもらえないか。水曜日には自分も日本に行くのでその際お礼にそちらに立ち寄らせてもらう。”と、書かれていた。マダムは“ホテルは、シンガポールで代理店を通して予約決済されたらどうですか?”と、返信した。 その日の午後2時頃、男がまたマダムの店にやってきて、“父親からメールは届いたか?昨晩はコンビニで寝た。水曜日には父親といっしょに来るのでその時には借りた金を返す。それまで、状況を報告しに毎日やってくる。”と、言ったそうだ。マダムは、“5000円だけ返してくれたらいいいので、もう来なくていい。”と言って男を帰した。 私はこの後、この度のやりとりを聞き、マダムに今の状況が非常に危険な展開になる可能性があることを告げ、一緒に派出所に同行し、夜間巡回時にマダムの店を立ち寄ってもらうように依頼した。 本当に男が財布とパスポートを失くして困っていただけで、貸した5000円は何事もなく返ってくるかもしれない。それでも、災難の降りかかる可能性のある善意の扉は、もう開けない方が良いとマダムに伝えたかったのだ。 一度扉を開けると、閉まらないように足をこじ入れられることがあるからだ。 |