朝電車に乗ると、一塊になった女子学生の存在感ある声だけが車内に響いている。それ以外の通勤客のほとんどは、うつむいて目を閉じているか、他の客と目を合わせぬように外の景色を見ているか、スマートフォンを見ているか…、以前に比べれば小説や新聞を広げる客の数が少なくなったように思う。 笑顔の人が全くいない。ほとんどの人が申し合わせたように憂鬱そうだ。これから学校や職場で始まる他人との関わりが重荷のように見えてくる。この時間に電車に乗る人は、ひょっとすると今の人生に満足できていないのではないかと思ってしまう。 案外と、乗り合わせた子供達は、電車のなかでこんな大人の姿を見て、社会とは辛く、て面白くないものに違いないと学習するのかも知れない。 さて、私はと言うと、他の客と同じように無表情な顔を決め込んでいる。通勤電車のなかで一人で笑っていると怪しく見られてしまうし…、そう考えると笑顔でないからと言って、別に人生が辛いわけでも憂鬱でもないのかも知れない。多少眉間に皺をよせている人がいても、それが通勤時では普通の顔だと納得すべきだと自分に言い聞かせる。 ただ、通勤時の電車のなかの女性が、美しく見えないのは確かである。人間には笑顔が大切であると電車に乗ると考えさせられるのだ。 |