朝、葬儀に参列した。自衛官の息子と高校生の娘を残して逝った母親はまだ49歳。自宅で心筋梗塞で倒れ、娘の腕のなかで死んだ。死化粧は彼女の会社の社員達がみんなでしてあげたようだ。そこここで“早すぎる。かわいそう。”と言う声が聞こえた。 だが、私は知っている。自分の身にも、すぐにでも、死がやってくるかも知れないということを…。 自宅からの出棺を見送った後、車に戻ったらダッシュボードの上に、先ほどまでなかった小さな袱紗が置かれていた。心当たりがないので車内を見渡すと、足元に交通安全祈願のお札が転がっているのを見つけ、袱紗が吸盤付のお札の下についていたものだと分かった。お札を手に取ると、アクリルのなかに入ったお札の下部分にある袱紗の吊元が切れていた。おそらく吸盤がはずれダッシュボードに落下した時に外れてしまったのだろう。 一瞬、これで難を逃れたのだと呟いた。 会社に戻ってしばらくして、近くの神社を参り、切れたお札を納め、新しいお札を買って帰った。 ただ、ただ、今元気でいられることを感謝する。 |