山手線、仕事を終えて乗り込んだわたしが座ろうとする席の隣にはかわいらしいメガネ男子。と、そこにべったりもたれかかる女子。トロンとした目をメガネ男子に向けながら、身体ごと完全に預けちゃってる状態。 わー、わたしもベタベタするのはきらいじゃないほうだけど、さすがに外であそこまではできねえなあ。電車内でああいうのちょいちょい見るけど、盛り上がってんだなあすげえなあ。……いいなあ。 などと思いながら着席。するとどうやら隣席は三人組だったようで、かわいらしいメガネ男子は女子を飛び越えて向こうのこれまたもうひとりのかわいらしいメガネ男子となにやら話をしていた。 わー、ともだちがいてもあんなにべったりなんだ。すげえなあ。……いいなあ。と、おもった瞬間。 とても静かに、そうほんとうに音もなく男子のズボンが濁りのあるワイン色に染まり、半液状のものが床に溜まっていった。慌てる隣のめがね男子ふたり。 「あっやった!」 「うわ、おれ、なーんか生温かいものが伝わってくるなって思ったんだよ~」 「とりあえず次の駅で降ろしましょう」 などと話している。 つまり女子はべつにいちゃいちゃでもたれていたわけではなく、単に泥酔していただけだった。とりあえずかばんをあさってみたら未使用のポケットティッシュがあったので渡す。 しかし止まらない静かな嘔吐。なんでしたら手拭いもありますけど、と声をかけると「いや、もうこれ拭くとかいうレベルじゃないんで、だいじょうぶです」との返答。ですよね。 そうこうしているうちに駅につき、メガネ男子はふたりともズボンをどろどろにして女子を引きずりながら降りていった。 残されたのは吐瀉物とわたくし。 とりあえずまだかばんにあったティッシュを吐瀉物にばさばさとかける。あたりまえだがたいした効果はない。駅につくたび乗ってくる客が驚いたりちいさく悲鳴を上げたり顔をしかめたりして避けてゆく。 あの青年ら、降りた駅で駅員にひと声かけたんかなあ、とそれが気になったのだけど、わたしが降りる駅までまったく駅員が処理に来る様子もなかったので下車駅の改札で、いまの新宿方面行きの3両目ですが先ほど隣のかたが吐いてしまってそのままになっていますといちおう報告。 床ですか?シートもですか?右側ですか?左側ですか?と、けっこうくわしくたずねられたので、へえーっておもった。行けばわかるでしょって話でもないんだなあ。と。 しかし、冗談抜きで右左がよくわかってなくて、教習所でも「右折左折だとよけいに混乱するので指示しないでください」とお願いしたあげく、じゃあ次を右に曲がってねっていわれておもいっきり左折したことのあるわたしなのでちょっとあせったし、右側ですって言ったけど合ってるかどうか自信ない。 酒は飲んでも飲まれるな。 という言葉、まあ飲まれてこそ酒って部分なきにしもあらずなのでべつにどっちでもいいとおもうけど、そうそうほんとに飲み過ぎて吐くときってオエエゲエエっていう派手な音って出ないんだよね~。胃液まで出きってそれでもまだ出そうっていうときは「ガコッ、ガコッ」っていう音がするよねー。 なんてことを思い出したり。 わたしもむかし、ばかみたいにテキーラショットとかやりすぎて帰りの電車でこれは来るぞと懸命に次の駅まで飲み込みながら堪えて、西武新宿線中井駅で飛び降りて、幅わずか1mほどしかないホームのフェンスにつかまって、しかし気持ちだけでもと線路上に身を乗り出して吐いてたら電車が来て危うく命を落としかけたことがあったっけ。そして翌日ホームにおがくずの跡とかみてものすごい罪悪感だった。 酒やめようっておもった。心から。なのにあれから何年経ったのか。 それから、こんな地味な顔立ちのわたくしですが若いころにはキャバクラでバイトなぞしていたこともあり、その日は阪神優勝で大盛り上がりのトラキチが来店し、六甲おろしにあわせて一気飲みして潰れたことがあった。 で、送りの車の後部座席に横になって、ていうかもう送りっていうか搬送されていたのだけれど、嘔吐感に目覚めてしまう。 止めてください、と言おうとした瞬間、耳に飛び込んできたのは運転席の黒服と助手席のホステスの痴話喧嘩。女の子は泣いている。ふたりはわたしがすっかり寝入っているとおもっているのだろう。 わたしは横になったまま自分のバックをこっそりとたぐり寄せてそのなかに、静かに静かにリバースしたのだった。 ああ、このふたりデキてたんだ……とおもいながら。 むかーしむかしの話じゃよ。 でも誰かに介抱されるほどって経験がない(記憶がないだけか?)。人知れずトイレで吐いてまた何事もなかったように席に戻るとか、道っぱたでサッと吐いて「じゃあ行こうか」つってさっさと立ち去るとか、友人と別れてひとりになった瞬間に吐いたりする。 お酒が強いからとかじゃなくて、なんかへんなプライドとか自意識が働いてるんだとおもう。 だから、今日の女子はメガネ男子ふたりに介抱されてたのでちょっとうらやましかった。 ああ、今日はタイトルに「しくじり噺」なんて書いたけど、嘔吐に限定した思い出話をとりとめなく書いただけで、酒の上での失敗なんて山ほどあってもう思い出したくもないよ。あれやあれにくらべたら嘔吐なんてぜんぜんしくじりなんかじゃないよ。でも思い出したくないから思い出話すらできないんだよ。 |
過去のコメント
いちゃいちゃ話に期待した僕のワクワク感を返してくれ(笑)
人前でいちゃいちゃするのに女性には最初だけ勇気がいるだろう。しかし、最初だけだと覚えて置いて欲しい。その後、周りから二人の世界を守るのは男の役目だ。
酒は怖い。好きだが弱いという最悪パターン。
リバースは学生で卒業したと思われ。
でも、社会人で白い悪魔のバスで病院に強制入学させられた。一時間持たずに記憶をなくし(それでも最後まで陽気に話してたらしいが)、起きたら見知らぬ天井が。泥酔していたが状況把握は早かった。
記憶を無くしても家には大抵帰りつくぜー(百パーセントではない(笑))と鷹をくくっていた僕も、さすがに怖くて2年ばかし禁酒した。
今は記憶を無くす手前までに必ず抑えたいと思っている。記憶は大切と2年間の禁酒生活が僕に教えてくれた。お酒は美味しいけど、大切な記憶を今までどれだけ捨ててきたのと。
あ、僕の話なんてどーでも良いや。
現場の対応、すごく適切だなと思った。今度見掛けたら参考にする。大抵見かけるの事後…だけどね。
人前でいちゃいちゃするのに女性には最初だけ勇気がいるだろう。しかし、最初だけだと覚えて置いて欲しい。その後、周りから二人の世界を守るのは男の役目だ。
酒は怖い。好きだが弱いという最悪パターン。
リバースは学生で卒業したと思われ。
でも、社会人で白い悪魔のバスで病院に強制入学させられた。一時間持たずに記憶をなくし(それでも最後まで陽気に話してたらしいが)、起きたら見知らぬ天井が。泥酔していたが状況把握は早かった。
記憶を無くしても家には大抵帰りつくぜー(百パーセントではない(笑))と鷹をくくっていた僕も、さすがに怖くて2年ばかし禁酒した。
今は記憶を無くす手前までに必ず抑えたいと思っている。記憶は大切と2年間の禁酒生活が僕に教えてくれた。お酒は美味しいけど、大切な記憶を今までどれだけ捨ててきたのと。
あ、僕の話なんてどーでも良いや。
現場の対応、すごく適切だなと思った。今度見掛けたら参考にする。大抵見かけるの事後…だけどね。
こんにちは
あまり呑みすぎるとケンカ早くなってしまうので、程々にしています。
上司からは呑んでも酔い潰れないので「ツマらん」と言われますけど、もうそんな若くないいんでね
あまり呑みすぎるとケンカ早くなってしまうので、程々にしています。
上司からは呑んでも酔い潰れないので「ツマらん」と言われますけど、もうそんな若くないいんでね
>ユーさん
他人のいちゃこら話を聞いてなにがたのしいか。
ふたりの世界はどうぞご勝手におふたりで守ればいんじゃないですかぁあああ~、って感じですね。
二年禁酒ってすごいです。
わたしも何度も記憶や持ち物や人間の尊厳を失っているのになぜそれができないのだろう…。
事後でも、報告するとなんか善行積んだっていう自己満足でいい気分になれますよ!
>ケ・スーヨ
こんばんは。
程々ができるのだからそれはすばらしいですよ。
なんでもかんでも「あのときは酔ってたから…」で済ませようとするのって、客観的にみるとすげー愚かしいことだとわかりました。三十路過ぎてやっと…。
他人のいちゃこら話を聞いてなにがたのしいか。
ふたりの世界はどうぞご勝手におふたりで守ればいんじゃないですかぁあああ~、って感じですね。
二年禁酒ってすごいです。
わたしも何度も記憶や持ち物や人間の尊厳を失っているのになぜそれができないのだろう…。
事後でも、報告するとなんか善行積んだっていう自己満足でいい気分になれますよ!
>ケ・スーヨ
こんばんは。
程々ができるのだからそれはすばらしいですよ。
なんでもかんでも「あのときは酔ってたから…」で済ませようとするのって、客観的にみるとすげー愚かしいことだとわかりました。三十路過ぎてやっと…。
あっ、ケ・スーヨさん呼び捨てになっちゃってら。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
田舎で育ったので、酔っても車に乗れますが酔ったら電車に乗れません…
今年、目覚めたら池袋で仕方なく朝までドンキでビバークしました(泣)
飲んでも顔に出ない時が有りますが弱いのですぐ寝たり(笑)
誰に迷惑掛けようが、気持ち良く酔った者勝ちでしょ!
今年、目覚めたら池袋で仕方なく朝までドンキでビバークしました(泣)
飲んでも顔に出ない時が有りますが弱いのですぐ寝たり(笑)
誰に迷惑掛けようが、気持ち良く酔った者勝ちでしょ!
飲酒好きの身として酔った勢いも失敗もわかるので迷惑の受け皿はでかいほうですが、そのお考えにはぜんっぜん共感できないっすねー。