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ひろし日記

 
2013-08-19

大漁  金子 みすゞ

カテゴリー: 日記
   大漁  金子 みすゞ

朝焼子焼だ
大漁だ
大羽鰮の
大漁だ
浜は祭りの
ようだけど
海のなかでは
何万の
鰮のとむらい
するだろう

 ※ 大羽鰮(おおばいわし)

 金子みすゞさんは、1903年生まれですから、いまから100年以上も前に生まれたことになりますが、そんな時代のこの詩人が、なんと無垢な心を表現できたのかと驚かされます。

 金子みすゞさんの詩は、話すような歌うようなことばで書かれています。
 ですから、金子みすゞさんは、童謡詩人と言われています。

 〈祭り〉と〈とむらい〉という、生活のなかの大きな行事が並べられています。
 これも一つのくりかえしでしょう。
 と同時に、鮮やかな対比でもあります。

 自分(たち)の喜びが、そのまま他の人(たち)の喜びになれば、その喜びは倍増されることでしょう。
 でも、自分の喜んでいることが、他の人の悲しみになっていることを、知らずにいることが多いのではないでしょうか。
 そのことを、この詩人は、鮮やかに描きだしています。

 いま子どもたちは、受験体勢の教育のなかで、自分の喜びが他の人の喜びとなる心を、押しつぶされています。
 ことばの上では、「みんなといっしょに」などと、子どもたちに伝えられることはありますが、実際の行動として求められるのは、他の人のことよりも自分のことだというのが、現状ではないでしょうか。

 そんなことはないと明確に言い切れない、なんともいえない気持ちを私自身重く感じています。
 この、なんともいえない気持ちを、金子みすゞさんは、詩の形で示してくれたように思います。

 子どもたちが、やりきれない思いを抱えているように、やりきれない思いを抱えているのは、子どもたちだけではなく、大人もそうだと思います。
 そんな思いに共感してくれるような詩が、金子みすゞさんの詩だと思います。

 詩人というのは、なんとすごい感性を持っているのでしょう。
 100年も前に生まれたのに、現在の私たちの思いに、ぴったり共感する詩を作るのですから。
 金子みすゞさんの生涯が、舞台や映画になり、金子みすゞブームと言われていますが当然なことだと思います。
 金子みすゞさんの詩を読むと、そのことがよくわかります。