春が好きだ。夜、外にでると予告もなく生ぬるい空気がねっとりとまとわりついてきて、身体の奥からざわざわと虫が這い出てくるような感覚のなか見上げると闇の中に桜がぼうっと灯のように浮かび上がっている。桜の散り際は無残でみっともない。ひとひらひとひら雪のようにふるうちはまだいい。道路を隙間なく埋め尽くしくちゃくちゃに踏みしめられて茶色く腐ってゆく。あんなに待ち焦がれたのが嘘みたいに、誰も見向きもしなくなるしね。時折り風が吹けば、興味を失われてもなおこっちを見てとでもいいたげに足元にからみついてくる汚らしい花びら。そもそもどれだけ咲き誇っても、じつは誰も花なんか見ちゃいない。すぐに飽きられるただのにぎやかしだってこととっくに気づいてるだろ。椿のようにいさぎよく首ごと落ちてしまえれば、もしかして誰かが拾って窓辺に飾ってくれるかもしれなかったね。なんてことを考える葉桜の頃には、わたしのあたまは夏の準備をしている。わたしは春が好き。でもいちばんは夏が好きで、つまり秋と冬が嫌い。そんなわたしは春生まれ。 明日は同居人らでお花見。サンドイッチの具はツナとたまごとコンビーフ。たまねぎの辛味が抜けてないうちに思い立って(塩気で辛味抜けるんじゃね的な)コンビーフと混ぜちまったが明日にはどうなってるか。だめならマイクロ波の刑。あとは新生姜の千切りを豚バラで巻いて照り焼きに。エディブルフラワーが半額になってたので勢いで買っちゃったけど、わたしにはそれを操れるセンスが到底ないので弁当箱のなかにバラバラ散らすだけにしようそうしよう。たくあんと大根じゃないだけありがたく思ってもらおう。だいたいサンドイッチが入る弁当箱なんてうちにあったか否か。 たばこをカートン買いしてしまった。初めてというわけではないけど、値上がり前のまとめ買いというのは初めてだった。なんかかっこわるい気がしてさ。しかもまとめ買いすると常にストックが手元にあるゆえ安心して吸い続けるので減りが早い気がする。で、たぶん10年以上ぶりのカートン買いだったんだけどやっぱり愚かしい気分になった。やっぱたったの10個が4000円越えとか、ああー…ってなる。まだやめませんけど。 |
わたしは点鼻液ジャンキーなんだけれど、このところとにかくひどかった。おそらくこれはうわさに聞いていた点鼻薬で血管を収縮させる反動によりさらに鼻腔が腫れ上がるという点鼻薬性鼻炎とかいう元も子もない病なのではないかとおもってついに耳鼻科に行ってきた。 近頃は治療だったりドーピング目的だったりで週1のペースで尻に注射を打たれ、液体窒素で皮膚を焼かれとしているのに、さらに今日は鼻の穴を医療ステンレスの器具でギチギチ開かれた。保険の効く医療SMプレイをしている気分になる。 ともだちよこれがわたしの一週間の仕事です。テュリャリャ…。 どうでもいいけど待合室にブラックジャックを置く病院って度胸あるなっておもうよ。しかもこれがけっこう多い。よろしくの方じゃないぶんまだましか。ネットでそうさえずったら、自分が知ってる小児科には東京大学物語が置いてあったとレスポンスがあった。引くわー。 とかおもったけど、子どものころ住んでた団地の診療所には、魔太郎がくる!!が一冊だけ置いてあって、藤子不二雄の文字に誘われて手にとった幼い日のわたしに強烈なトラウマを植えつけたのだった。目の中に火のついたたばこを入れる人が出てくるシーンがあって、それがおそろしくて半泣きで閉じたし、しばらく診療所の前を通るのすら嫌だった。それにあのさー個人的にかもしれないけど昔のチャンピオンコミックスが子供心にすげーこわかったんだよ。表紙も怖かったし、カバー取れたやつも怖かった。魔太郎とがきデカと恐怖新聞のおそろしさはハンパなかった。エコエコアザラクも。 ちなみにその目にたばこを入れる人というのは変目さんという名前だと大人になってから知った。 あ、本といえば今日、調剤薬局で待ってるときに「日本の麺マップ」という本が置いてあったのでぱらぱら見てたらこれがご当地麺の紹介本だったんだけど特定の店をあげた提灯記事で構成されたグルメマップではなくおもしろかった。奥付をみると売り物ではなさそうっていうか、久光製薬が作って配ったもののようだった。薬剤師さんに、これ売ってないんですよねえ(チラッ)って言ったら「あげるよ!好きなんでしょ!」って言われてすこし恥ずかしかったけどちゃっかりいただいてきた。わーい!!!! |
飛行機が片道2000円だったもんで勢いで沖縄に行ってきたんだけれども、これがまあ最高でした。 那覇から一時間ほどの離島にも一泊してダイビングを楽しんだ、といいたいところだがダイビングショップ兼宿のオーナーがもうなんていうか(いま流行りの)おもてなしの心が皆無っていうか人の話まったく聞いてねえっていうか人の話聞かねえうえに自分の話しかしねえから会話がまるで成り立たないっていうか。なんかもうあれだった。あれ。 カクレクマノミかわいかったょー♪ じゃねえよダイビング初心者にはニモ見せときゃいいとおもったら大間違いだよ。こっちは徹頭徹尾ウミウシが見たいそれ以外は興味ないって言ってあったのに。だいたい観てないしあの映画。興味なさすぎてずっとニモが張りついてるイソギンチャク見てた。そういうのが好きなんだよ。海藻とかナマコとか。岩や海底に張りついた生き物が(ウミウシとかウミウシとかウミウシ)が見たいからわざわざ安くない金払ってオエッてなりながらピチピチのウェットスーツ着てばかみたいに重い機材背負って潜るのにシュノーケリングで見れる魚群追っかけたって意味ないでしょうが!!!!!だいたい夕飯がキムチ鍋一品のみってなんだよ!!!!!!!!!!! この件に関して軽く一時間は口汚く罵れる。 那覇に戻ってからは前日、貴重なごはんチャンスを無駄にさせられたうさをはらすべく超いっぱい食べた。一日五食ぐらいたべた。何度でもいうけど夕飯がキムチ鍋一品のみってなんなんだよ。一人暮らしかよ。 まあでも沖縄最高でした。那覇空港についた瞬間すごいあったかくて、トイレで半袖に着替えてからずっと半袖で、半袖から長袖に着替えるタイミングを逃して羽田についたらすげえ寒くてひとりだけ半袖でばかみたいだった。 |
寄席メモだけは欠かさずつけようとおもっていたけれど、まあ続かないよね。そういう人間。改善する気はないです。 1月9日 金原亭馬治勉強会 お江戸日本橋亭 「七段目」 寄席囃子講座 お仲入り 「富久」 1月17日 自分主催の落語会 ないしょ(いちおうプライバシー配慮) 1月21日 ぎやまん寄席 春風亭百栄・春風亭一之輔ふたり会 湯島天神 一之輔「干物箱」 百栄 「大どこの犬」 お仲入り 百栄 「コンビニ強盗」 一之輔「藪入り」 わりとお席に余裕があって、えーっこんなもんなの!?とおもってしまった。平日とはいえなんかびっくりしたなあ。わたしは一之輔が鈴本初席のトリでもいいとおもっているし百栄が去年R-1グランプリの予選落ちしたと聞いてもう世のお笑いにはついていけないとおもった。 トリの藪入りで泣いた。わたしは両親の余命がわかるまでまったくといっていいほど寄りつかなかった。母親は認知症が発症して、あらゆることを忘れ多くのことに疑念を抱いて偽の記憶と書き換えてゆくなかでも、わたしの好きな食べ物を覚えていた。こんな気持ちで帰りを待たれていたのかもしれないとおもうと涙が止まらなかった。まつげエクステつけたばっかりで、四時間は濡らすなっていわれているのに。しかしこちらの涙お構いなしで笑わせにもかかってくるので最終的にはなんかよくわからない感情になった。わたしのなかでは人情噺でも落語ってこうであってほしい。 気分が良いので近所の焼き鳥屋に入ったら、ささみユッケのささみがまさかのゆでささみだったので超がっかりしてビール一杯ですぐ出て居酒屋に入り直して日本酒、本を読みながら一服。カラオケ行って帰ってきた。もちろんオールひとり。ちょっと雪が降っていた。 |
日記は三日坊主よりは長続きした方だからまあいいかな。 近況はとくに変わりなく、ちょっと忙しい気がする。ちょっとだけ。 年末は疲れが身体に出たみたいだったので初めてプラセンタ注射を打ってみた。前々から興味はありながら、打つと献血ができなくなるということだったので躊躇していた。わたしは献血をするたびに善行を積んだ気がして、来世はお大尽という企みをもっていたのだけれど、火の鳥を読んだところそれくらいではたいして来世に影響なさそうだとわかったので思い切って他人より自分をとった。「これをしたらこれが一生できなくなる」という制限がかかることなど人生にそうあることではないような気がするし、まず人生ではじめてのことだったので、もしかして34年間のうちいちばんの決断だったんじゃないか。 そんな感じ。お正月は通販でケジャンを買い込んでジャニーズと演芸番組をみながらひとりでお酒を飲んでいた。三が日ずっと蟹。さいこう。 あとは不定期でバーのカウンターに入ったり自分で主催する落語会の準備でいっぱいいっぱいの年明け。 |
整理整頓が苦手なんですよ。それはそれは苦手。物をコンパクトにまとめるのも苦手。いるものといらないものを選り分けるのも苦手で、隙間なく詰め込むのも苦手。旅行かばんはいつも限界だし、つまりはテトリスも苦手。 部屋の掃除もとても苦手なのだけれど、これは現時点で劇的に改善されたほう。昔は「女として終わった瞬間/汚部屋に住む女・低所得代表」みたいな見出しで週刊誌に載ったほどひどかった。だって一万円くれるっていうから…。 現在はというと、まあ突然の来客は受け入れられない。けど、大好きな人だったら数時間前、それ以下だったら前日くらいまでに言ってもらえればそれなりにできるレベル(押し入れは開けちゃだめよ)まで改善された。たとえばそれまでは手元にある布をかき集めて眠るハムスター並だったのがなんとか人並み以下になったという感じか。 無理やりちょっとイイ話にしてしまうと、あたりまえのことをあたりまえにできなかった人間が、できるようになったからこそ見えてくることもあるわけで。部屋って精神状態に反映するとおもう、ということ。部屋が汚れてくるとどっか調子が悪いとか、なにか無理してるんだと思える。自分の環境を心地よく整える気力がないとか、自分にとって良い環境が見えてこないということは、そういうことなんじゃないかなあと。だからわたしはこのへんをバロメーターにしている。 で、今日は重い腰をあげて掃除にとりかかったんだけど、半分ほどで挫折した。大半が本と洋服とフライヤーが散らばっているだけなので、捨てるかあるべきところに戻すしかないはずなんだけどな。本棚がいよいよ足りなくなってしまったから、いいかげん売るか捨てるかしないとなんだけど、本棚を買い足そうかとかばかなことを考えたりもする。すでに四畳半に180×180の本棚があるのに、さらに設置なんて我ながら狂気の沙汰だ。 そう、部屋の掃除をしていると、本棚に限らずちょっと不満だった部分を改善したくなってついネットショップとか見てしまったり、クリスマスや年末年始はどう過ごそうかなとか、前向きな雑念が溢れてきて集中力が途切れる。 というわけで本棚は言語道断だけど15年ぶりに電源タップ買っちゃった。細かい散財がおおくてまずい。来月は名古屋の大須演芸場に行きたいとおもっているのに。 |
国立演芸場(仲入りから) 滝川鯉津 狸札 笑福亭羽光 親子茶屋 ビックボーイズ 三遊亭遊吉 浮世根問 カンカラ 桂歌春 強情灸 三遊亭とん馬 豊竹屋 桂なん南 長命 ボンボンブラザース 三遊亭遊三 時そば 池袋演芸場 古今亭志ん八 隅田川馬石 元犬 マギー隆司 奇術 林家しん平 なんか池袋の狭い焼肉屋とか上質なタンの話 桂藤兵衛 時そば ひびきわたる(ホンキートンク代演) 五街道雲助 家見舞 お仲入り 蜃気楼龍玉 鰻屋 三遊亭円丈 大須演芸場のまくら、強情灸 林家正楽 紙切り「クリスマス」「スカイツリー」「大須演芸場」「酉の市」 桃月庵白酒 幾代餅 初めて国立演芸場に行ってきた。とにかくきれい。椅子が良い。ばたばたと遅刻して仲入りから。そして終わったら急いで有楽町線で池袋。今席はどれもおもしろそうだったんだけど、行ける日が足りず悩んだ。日が足りないっていうより、休みの日に限って貸し切りだったり目当てが休演だったりで結局昼夜はしご。末廣も行きたかったなー。 池袋について、区切りまで待とうとおもって一服。池袋演芸場は喫煙所のすぐ目の前に楽屋入口があって、たびたび芸人が出入りするのをよく見るのだけど、ほんとに噺家って街で見かけても絶対に気づける自信ない。今日もおっさんが楽屋に入っていくのを数人見届けたけど、気づいたのは席について香盤表広げてからだった。円丈の顔なんか絶対忘れないとおもうんだけど、一致しないんだろうな、脳内で。 今日は時そば二回聴いた。そんな季節なんだよな。飽きっぽいわたくしがほどほどながら一年も寄席通いをしていることに自分でびっくり。紙切りでも「スカイツリーはやっぱり多いなあ」とか「酉の市、去年も見たなあそんな季節だなあ」とか、五街道一門を聞きながら古今亭はいいなあ、そしてやっぱ志ん朝より馬生だなあ、なんてことをえらそうに考えるようになったもんだよなんてことを考えるようになったもんだよ。しみじみ。 国立では「思い出の噺家たち」という資料展示がやっていたのだけれど、北海道の遠征先で馬生の訃報を聞いた志ん朝が「まいったことになったなあ、兄貴に相談しないと…そうか兄貴がいないんだ」と言ったエピソードに涙腺がゆるんだ。そして円丈のまくらで目黒名人会という入った客が皆後悔するという寄席で馬生がトリを取ったとき、無反応な客と静かな語り口が相まって終演に前座が気づかず、馬生自らが追い出し太鼓を叩いたという話。好きだなー馬生。 ところで、仲入り後に斜め前に座った男性にどうも見覚えがある。寄席でよく見る客っていうのはもちろんいるんだけれど、そういう類ではない気がする。誰だっけ誰だっけ、でもさほど親しい人ではないはずだ、うーん……あっあれはそうだあの人だ!……で、あの人の名前なんだっけ?と頭を抱えた。そもそもがそういう人間だから、高座でしかみたことのない噺家を私服姿で見つけるなんてことはそうそうできるわけがないのだ。 たしかカワイさんだったとおもうんだけどなあ。 |