“身もだえする痛み”という意味を辞書で調べてみると、それなりの説明があるのだろうが、実際にそのような痛みを経験したことが無ければ、文字を読んだだけでその痛みを想像することは難しい。ただ何かの拍子にそれに近い感覚を味わったなら、その痛みは頭のなかでイメージ化される。 “身もだえする痛み”のなかには、死にそうなくらいの痛みもあるし、それほどでもない痛みもあるし、本当に死んでしまう痛みもある。ほとんどの人は経験したことのない傷を負ったとき、その痛みがこの世の中で最もつらい痛みのように思うが、死んでしまう痛みに比べればたいしたことはない。 “身もだえする痛み”を今、感じた時、それまで思っていた“痛み”がそれほどの痛みでなかったと思えるものだ。だから自分にとってそのときに最高につらい痛みはあっても、世の中で最もつらい痛みというものはない。 まだ自分の知らない大きな痛みがあることを知り、今その痛みを感じている人がどこかにいることを客観的に理解することが、謙虚に自分が世界の中心に在ると思うために不可欠な要素に違いない。 あなたにとっても、私にとっても、今知る“心の痛み”は、自分に厳しく、人に優しく在るための小さな糧なのだろう。 |