【プロローグ】 私の名は睦。 この春高校を卒業し今は実家を出て一人暮らしをしている18才です。 私の父は、幼い頃病死し母が女手一つで育ててくれました。 そんな母にもいつしか一緒にいたい男性が現れ2年前に再婚、乙女心に母をそっとしてあげたいと想い、また将来パティシエになりたい夢もあり、高校卒業と同時に実家を出ました。 慣れない一人暮らしと寂しさから、とある出会い系サイトに登録。 毎日のように多くのメールが届きます。 「今日暇ですか?今から会わない?」、「いくら欲しいですか?」、「一人暮らしなら用心棒になりますよ」・・・ こんなメールばっかり・・・・所詮出会い系なんて体目的の人しかいないのかな・・・・ 心の安らぎが欲しい・・・・ お父さん、寂しい・・・・ そんな中で数人の男性とメールをしましたが、何れの男性も数日後にはいつなら会える?という展開ばかり もっと私のことを見てくれる男性はいないのかな・・・・ 【出会い】 これまで自らメールを送ったことなどなかった。 ある時掲示板を見ていると目に留まるハンネが・・・・ 「WISH」 何て素敵なハンネなのでしょう・・・・ 願い、願望、希望・・・・ この方は真剣に出会いを求めてる、私はそう直感しました。 初めて自ら送るメッセージ、期待と不安で何て書いたらいいのだろう・・・・ 「こんにちは、初めまして。素敵なお名前ですね。」 この1行しか送れませんでした。 その日、返信が来ることはありませんでした。 しかし 翌日、返信が・・・・ 「こんにちは、WISHと言います。連絡ありがとうございます。私は真剣な出会いを求めここにやってきました。 ここに登録する際、名前をどうしようか悩みました。40才の私が真剣な出会いを求めていることを伝えるためにこの名前を選びました。」 私はWISHさんを凄く誠実な男性だなと思いました。 私は彼と繋がっていたい、そう想い多少不安はありましたがアドレスを送信。 翌朝、WISHさんからメールが・・・・ 「おはよう!昨日はありがとう。」 この一言のみ、でも嬉しい。 こんな私に連絡をしていただけるなんて・・・・ それから毎日彼からメールが届き、彼の名前が幸彦さんだと判りました。 社会に出ているとはいえまだ18の私には幸彦さんとの会話で多くの事を学びました。 温かい人だな・・・・ 幸彦さんと繋がっていたい・・・・ 幸彦さんとメールを始めてもう1ヶ月か・・・・ ある時幸彦さんから「何故、実家を出て1人暮らししてるの?」と聞かれ 返答に困った。 今の私には幸彦さんが大切な存在。 正直に話そう 「私のお父さん、いないの・・・」 私は父が病死し実家を出てきた理由を幸彦さんに話しました。 すると彼から 「そっか、大変だったんだね。お母さん想いの素敵な女性なんだね。辛い事を思い出させてしまってごめんね。」 素敵な女性、私が・・・・ 体中に電気が走るような感覚。何だろう・・・・ 幸彦さんと一緒にいたい・・・・ 【衝撃の告白】 私は幸彦さんが好きだと初めて認識しました。 私はまだ18才、幸彦さんは40才。 素敵な男性だけど年の差が・・・ こんな素敵な男性だから他に好きな女性がいるのかな・・・・ 私が好きになるくらだから他の女性も放っておかないだろうな・・・・ 叶わなくてもいい、私は幸彦さんが好き。 そんな事を考えていると 「私は睦以外にもう1人の女性とも話しをしている。 私の心は彼女に傾いている。だから睦とはメル友以上にはなれない。」 それは衝撃の告白だった。 やはり・・・・しかし、私には幸彦さんしかいない。 私は強がって返信をした。 「知ってたよ。だって幸彦さんみたいな男性が子供みたいな私とは釣り合わないもんね。幸彦さんの心の中に僅かでも私への気持ちがあったならそれで・・・・」 動揺はあった、しかし幸彦さんへの想いは断ち切ることができない。 「私は幸彦さんとお話ができればそれでいいの。これからも話してね。」 精一杯の言葉だった。 もうメールは届かないのかな・・・・ そう想うと涙が溢れてきた。 その晩、久々に実家の母に電話をしました。 「お母さん、心が寒い。さっきまで心に太陽があったのに消えてしまった・・・・・」 すると 「どうしたの?失恋でもしたの?太陽は沈んでも必ずまた陽は昇るのよ。 睦が好きになった男性なら素敵な方なんでしょう。自分を信じて、その男性の事も信じなさい。 睦の一途な想いは必ずその方に届くのよ。」 母から大切なことを教わった瞬間だった。 そうよ、さっきは勢い余って言ってしまったけれど私が幸彦さんを好きと言う気持ちに変わりがない限り、この想いはいつか届くのでは・・・・ 私はやっと気持ちを落ち着かせることができました。 そんな想いが彼に届いたのか翌日、いつもと変わらず彼からメールが届いた。 よかった、幸彦さんの心の中にはまだ僅かでも私の存在がある。嬉しい。 幸彦さんの心の中に私がいる・・・・ そう感じられただけで幸せだった。 中編に続く |
幸彦:「なあ睦、次の日曜日に海に行かないか?」 睦:「いいけど、急にどうしたの・・・」 幸彦:「睦と一緒に海が見たくなったんだ・・・」 睦:「うん、いいよ」 日曜日、私は車を走らせ睦を迎えに行き、海を目指しました。 海に着くと2人で浜辺を歩きながら私は睦と話を始めます・・・ 幸彦:「睦、俺達もう永いよな・・・」 睦:「・・・・・」 幸彦:「あの時のこと、覚えてる?」 睦:「あの時?」 幸彦:「告白したときのこと・・・」 睦:「うん、嬉しかった・・・ あの時が私達のスタートだったのよね」 幸彦:「今でも思い出すなぁ」 幸彦はそのときの状況を思い出していた・・・ 高校2年の春 放課後の教室で、偶然睦と2人だけになったとき、以前から睦に好意を寄せていた幸彦は 幸彦:「睦さん、以前から素敵な人だなと思っていたんだけど・・・ 私と付き合ってくれない?」 睦:「えっ、何突然・・・」 幸彦:「前から言おうとしていたんだけど、タイミングがなかったんだ。」 睦:「私ね、幸彦さん好きだよ。 でもね、今は勉強を第一に考えたいの・・・」 幸彦:「じゃ、一緒に勉強しよう・・・」 睦:「うん、わかった。私、頭悪いからいっぱい教えてね。」 幸彦:「俺もあんまり頭良くないけど一緒に頑張ろう。」 それからの2人は互いに勉強する同士として、時にはライバルとして切磋琢磨し同じ大学への進学が決まりました。 ある晴れた日、2人で散歩をしていると 目の前に1つの餌箱を囲み、数ひきの猫が集まっていました。 幸彦:「睦、猫可愛いね。」 睦:「うん、あんな風に仲睦まじくなりたいなぁ・・・」 幸彦:「そうだね。だけど今はお互いにまだ大学生、勉強も大事だよ。」 睦:「うん、わかってる。」 大学で互いに専攻するものは違っていたが、お互いに励まし合い、2人とも4年生の秋には就職先も決まっていた。 幸彦:「なあ睦、俺達もう卒業するだけになった。 今年のクリスマスは一緒に過ごそう・・・」 睦:「うん、自分達へのご褒美だね。」 その年のクリスマス 私は睦が好きそうなクリスマスツリーをを用意し睦の部屋に向う。 睦:「うわぁ~、素敵~、ありがとう・・・」 清しこの夜、2人は結ばれました。 2人はより強い絆で結ばれ、無事大学を卒業。 社会人になってからの2人は毎週のようにデート。 翌年のクリスマスが近づくころ公園を散歩していると・・・ 幸彦:「睦、俺達ずっと一緒にいような・・・」 睦:「うん、そうだね。」 気がつくと2人の前には傾いた陽によって描き出された長い影が伸びていた。 私はそっと睦の手を取りしっかり握った。 幸彦はこれまでの事を思い出していた。 睦:「でも本当に永かったね。」 幸彦:「この素敵な海のように睦への想いは永遠なのさ・・・」 睦:「うん、嬉しい。 でもいつまでこのままなの・・・ 私達もう40過ぎよ・・・」 |