髪を切る事。 今までの自分との決別。 変わるんだ。変えるんだ。 やさし過ぎるんだよ。 優柔不断。 男らしくない。 いつも他人の真似ばかりしていた。 『お客さん、今日はどんな感じに致しましょう?』 「えっ・・、あっ・・、ふ、普通の・・感じで」 普通。 つまらない。 自分に自信がないのだろうか。 流されやすい。 『お客さん、髪の方流しますね。お湯加減いかがでしょうか?』 「えっ・・、あつ・・、ふ、普通の・・丁度いいです」 君は、何かに本気で執着したことってある? 怒ってみなよ。 感情を出してみてよ。 全然、分からないよ。 『はい。後ろ、全体、こんな感じですが、 大分いい感じになりましたよ。どうでしょう?』 「えっ・・、あっ・・、大丈夫です」 変わるってなに? 個性ってなに? 本当の自分ってなに?? 『どうもありがとうございました。お帰り、気をつけて下さいね』 僕は、履いている白いタイツの股間から伸びている白鳥の頭が、 お店のドアに挟まれないよう、気をつけながらそっと店を後にした。。。 |