ついに現在の東京に帰ってきた仁。 多くの謎に自ら答えを見つけるかの如く咲の足跡を追っていく仁。 そして遥か時空を超えた愛にたまらず涙する仁。 この作品が仁と咲の愛情物語だったのだと改めて感じさせてくれた。 ではストーリーのほうを振り返ってみるとしよう。 何度も出てくるタイムスリップ現場のビルの階段シーン。 初めて包帯男からの目線で描かれていた。 このシーンは現在の仁と過去から帰ってきた仁とが交わる重要な場所だ。 何も知る由もない現在の自分と此処からタイムスリップし過去から必死に 帰ってきた自分とが〝奇形児の腫瘍〟を落とすことにより入れ代わってしまう。 現在に住んでいた仁が過去にいってしまうわけだが再び現在をめざして この日のこの場所に帰ってくることだろう。 そして包帯男となりまた現在に住む仁と階段で出会うのだ。 仁が永遠に過去と未来を旅することになるであろう物語の核心だ。 この永遠の繰り返しを想うと、手塚治虫「火の鳥・異形編」を思い起こしてしまう。 『 戦国の世、ある尼寺に侍がやってきて尼の命を奪いに来る。 尼は「お待ち申しておりました。」といい静かに手を合わす。 侍は尼を斬首して寺から出ようとするがなぜか森から出ることが出来ない。 仕方なくその寺で過ごしていかなければならなくなる。 侍は実は女なのだが父のせいで男として育てられていた。 その父が病気となり何でも治してしまう尼がいることを知ると 父を憎んでいた女は父を助ける尼の命を狙いにきたのだった。 いつしか女は〝火の鳥の羽〟を使いどんな病をも治す尼となっていた。 そして自分があのとき殺した尼になっていることに気づくのである。 やがて殺しにやってくる侍(自分)に斬られる運命を悟るのだ。 この尼と侍の行いは未来永劫、果てしなく繰り返される。 』 まさしく仁もあの場所から江戸時代へとタイムスリップしてしまい、 そして咲と巡り合う運命が待っており、咲を救うために現在を目指すに違いない。 しかし哀しいことだが咲とは時空を超えて結ばれることはない。 江戸時代から明治になり仁と関わりを持っていた人々は彼が消えたことにより その記憶自体消滅しているのだが咲だけはかすかに記憶していた。 あの10円玉のアイテムが生かされる場面だ。 名前も顔も思い出せないが手紙により想いを残そうとする。 そして大切にしまっておいたその手紙を現在に戻った仁が読むのであった。 咲の養女となった野風の遺児から生まれてきた現在の未来(ミキ)。 仁の現在の恋人であった彼女とは、出会いこそ違えどもこれから恋人となっていくのか。 彼女の脳の手術をしなければならないのは、やはり歴史の修正力か。 今度こそ手術が成功し未来(ミキ)と幸せに暮らしていくのだろうか。 ・・・それともまた違う別の未来(みらい)が待っているのだろうか・・・ |