帰り道、自転車を走らせていたらほんの一瞬だけ何かの花の香りがしました。 暗くて分からなかったけど、とてもいい香りで、私はとても幸せな気持ちになりました。 ふと、昔、大好きな沈丁花や金木犀を前に、今のこの香りをずっと残せたらいいのにって思ったことを思い出しました。 カメラが一瞬の景色を焼き付けるように、香りを閉じ込められる機械があればいいのにって。 今考えると、そんな機械なんていらない。 だって、カメラでどんなに綺麗に撮れようが、その瞬間を写したものだろうが、本物の自分の眼で見た本当のその瞬間に敵うものなんてないと思うから。 香りだって同じ。 閉じ込めてしまったら、きっと色褪せてしまう。きっとあの時のあの香りはこんなものじゃなかったって思ってしまう。 自分の眼と鼻と心と体全体で感じたその瞬間が、何より美しく大切なものなんじゃないのかなぁって。 残したいものって、映像や音声や写真よりも、心に感じた心に残ったものなんじゃないかなぁって思いました。 |